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独立国家アイルランド始まりの場所――「ダブリン中央郵便局」訪問記

今回は、アイルランドの歴史上欠かすことのできない出来事、「イースター蜂起」の舞台となった中央郵便局(GPO)について紹介しよう。

そもそもイースター蜂起って何ぞや? という方も多いと思うので、まずは簡単に概要を記す。

イースター蜂起とは、1916年の復活祭(イースター)週間にアイルランドで起きた武装蜂起のことである。

長年にわたるイギリスの支配を終わらせ、独立国家アイルランド樹立の礎となるために、パトリック・ピアース、ジェームズ・コノリーらをリーダーとした共和主義者たちによって引き起こされた。1798年の反乱以降、アイルランドで起きた最大の反乱である。

蜂起そのものは1週間で鎮圧されたものの、元来この蜂起は武力勝利を目的としたものではなく、自らの命を投げ出すことで、アイルランド人の独立精神を呼び覚ますことが最大の目的であった。

蜂起指導者たちの願いは死を以て成就し、アイルランドはこの事件以降、独立に向けて突き進んでいくのである。

以上wikiの説明を一部引用したが、反乱軍が拠点を置いた場所が、この中央郵便局なのだ。

さて、中央郵便局を訪れてまず目に入るのは、イースター蜂起の記念碑「死せるクー・フリンの像」だ。敵の前に力尽きようとしながらも、柱に体を縛り付け立ち続けるクー・フリンの姿は、イースター蜂起で散った指導者たちの精神を彷彿とさせる。

蜂起のリーダー、パトリック・ピアースが彼を個人的に尊敬していたことから、クー・フリンは何かと「抵抗のシンボル」「民族のシンボル」として言及される。アニメやゲームで大人気のクー・フリンだが、実のところ結構デリケートな存在なのだ。

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さて、中に入ってみよう。郵便局内部はこのようになっており、現在も通常の郵便局として使用されている。激戦が繰り広げられたことは微塵も感じさせないが、外にある大きな柱には、今でも弾痕が残っているそうだ。

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カウンターでは、パトリック・ピアースら指導者たちの記念切手を購入することもできる。上の写真の右手、20・21番カウンターで購入可能。20・21番カウンターのすぐ横に以下のような案内があるので、希望の商品名を伝えればすぐに対応してくれる。私は15ユーロの商品を購入。

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郵便局の右手に進むと、博物館「GPO Witness History Exhibition」の入り口がある。

ここでは、イースター蜂起が起きたころのダブリン市民の生活や、蜂起指導者たちの生涯を学んだり、ゆかりの品々を見学することができる。チケット売り場にはなぜか値段表が置いていないが、「アダルトチケットくれ」と言えば値段を教えてくれる。14ユーロ払っていざ入場。

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中はこのようになっていて、蜂起に至る経緯の説明パネルや、指導者たちの着ていた服、著書、勲章、当時の新聞などが所狭しと展示されている。実際に触れる小物も多くあり、子供連れでも案外楽しめるのではないだろうか。内容はハードだが…。

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そして「GPO Witness History Exhibition」最大の目玉と言って良いのが、この巨大スクリーンで見る映画だろう。

イースター蜂起当日の様子を描いた約20分間の映画なのだが、ハリウッド顔負けレベルでクオリティが非常に高い。まるで蜂起の真っ只中に放り込まれたような、迫力ある映像を楽しむことができる。

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内容もただ蜂起を英雄的出来事として持ち上げるのではなく、大英帝国軍に所属するアイルランド系兵士が無残に殺される場面や、窓を覗いただけの一般市民が殺される場面もあり、綺麗事では済まないイースター蜂起の凄惨さをよく描いている。

実際、イースター蜂起では子供を含めた一般市民も多く犠牲になっているのだ。

ギフトショップやカフェも併設


施設を一通り見終わったら、ギフトショップも覗いてみると良いだろう。イースター蜂起指導者たちのキーホルダーや記念コイン、クー・フリン勲章のレプリカなどが販売されており、その筋の人なら大興奮間違いなしだ。

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博物館の中には雰囲気の良いカフェもあるので、休憩がてらコーヒーでも飲み、歴史に想いを馳せるのもオススメだ。

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以上、ダブリン中央郵便局(GPO)についての紹介であった。

純粋にアイルランド伝承が好きという方には、あまり興味の湧かない場所かもしれない。しかし興味の対象が伝承であれ何であれ、アイルランドという国に深く触れる上で、イースター蜂起を避けて通ることはできない。もしイースター蜂起がなければ、この国は「アイルランド」ではなく、「イギリス」だったのかもしれないのだから。

アイルランドへ旅行した際は、ぜひとも訪れてみてほしい。

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参考資料

GPO公式サイト

イースター蜂起(wikipedia)


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