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#43:小惑星 孤独な僕Ver.

 小惑星が地球に衝突し、人類滅亡するまで、あと3ヶ月。残り3ヶ月の人生と分かったら、何をするべきだろうか。どう過ごすことが正解なのだろうか。正解などあるわけがない。人それぞれの幸せは違うのだがら。

第二章 孤独な僕

 生後1ヶ月で、赤ちゃんポストに入れられ、その後は施設で育ち、僕には親も友人もいない。小惑星が衝突し、3ヶ月後に死ぬと言われてもピンとこない。今までだって生きているという実感がなかったのだから。
 僕は今までいつ死んでも良いと思っていた。だけど、みんなが大切な人たちと過ごす中、1人で小惑星が近付いてくるのを待ち、死を迎えるのは最後まで、自分が惨めで嫌だなと思った。だから、僕は暴徒化した街を歩いていれば、死ぬことが出来るのでは、と他力本願の自殺目的で、毎日街を歩き回った。

  ***
 だけど、運が良いのか、悪いのか、僕はまだ生きている。暴徒化した街も、みな死と向き合い、足掻くのをやめ、どう最後を過ごすかを決め始めているせいか、平穏を取り戻しつつある。やはり駄目か。今まで僕は自分の望んだことが叶ったことはない。神様なんて存在しない。

   ***
 僕は悩む。小惑星を待つべきか、自殺を試みるか。まともな人生とは言えない僕であるが、意外にも自殺を考えたことはなかった。僕は何も考えずに、ただ毎日をやり過ごしてきたのだ。僕には、好き、嫌い、楽しい、辛い、悲しいなどの感情が欠けている。
 ただ人の役に立つことがない僕が、自殺をすると死体の処理など、人に迷惑かけるだろう。それは申し訳ない気がするなと思ったが、どうせもうすぐみんな死ぬのだから、1体くらい先に死体があっても気にならないだろう。

  ***
 でも僕は気付いてしまった。僕は今まで悩んだことがなかった。人から見れば、惨めな人生だったけれど、惨めで嫌だな、と思ったことがなかった。
 まさか最後を迎えるにあたって、欠けていた感情を取り戻すとは。死に方を悩むなんて、ある意味贅沢な悩みなのかもしれない。僕は可笑しくなる。こんな感情も初めてだ。僕は声に出して笑う。笑うと同時に涙も出てきた。

 やはり神様なんて存在しない。今感情を取り戻してしまったら、これから辛いだけじゃないか。もし神様がいるのならば、残酷すぎるじゃないか。

第二章 完

【あとがきという名の言い訳】
 この話のラストをどうするかは、すごく悩みました。ハッピーエンド、奇跡的なラストも考えていました。でも小惑星シリーズ(まだ2作目でシリーズと言って良いのか…?)は、今のところ5作くらいテーマが決まっていて、そのバランスを考えた結果、このような終わり方にしました。
 私は、何度も同じ本を読み返すタイプなのですが、救いのない話は読み返すことは基本ありません。でも自分が書くにあたって、救いのない話を書くとは、自分でも驚いています。まぁ、私の1番好きな小説はどう足掻いても書けないので、好きなものと書けるものは別なのでしょうね。
 小説や映画でも別々の話に見えて、実は繋がっているというストーリーが好きです。そういう作品をいつか書いてみたい。その足掛かりとして始めてみた小惑星シリーズ。一作ずつ丁寧に書きたいと思っています。残念ながら、丁寧と面白さは比例しませんが(笑)

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