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#7 新たに発覚?!チョコレート嚢胞。ゆらぐ体外受精への思い。

お医者さんからは、これだけ精子の数が少ないと、精索静脈瘤の手術をしても精子の数を増やせる見込みはあまりない、と言われていましたが、それでもやらないよりはやったほうがいい、と夫が1泊2日で手術を受けることになりました。
 
コロナもあり、手術がおわって麻酔が覚めてから病室に15分ほどしか一緒にいることはできませんでしたが、手術は無事終わり、次の日には元気な姿で退院してきたので、ほっとしました。
 

チョコレート嚢胞が発覚


 
それ以上不妊治療をするつもりはありませんでしたが、妊娠を積極的に目指さない以上、私も子宮内膜症の症状を改善させたかったので、もう一度病院へ行くことにしました。
自分の体のリズムを整え、夫の精子の状態もよくなれば、もしかしたら妊娠できるかもしれないというわずかな望みもかけて。
体外受精についても、私自身は直接お医者さんから説明を受けたことはありませんでした。
最後に気持ちの整理をつける上でも、夫が泌尿器科で顕微授精しか手がないといわれたことを婦人科の先生にも相談し、本当にそれ以外にできることはないのか聞いてみようと思いました。
 
病院に行くと、子宮と卵巣の状態を確認しましょうか、と内診。
すると、またしても先生が「うーん…」と難しそうな表情を浮かべています。
 
「先回来た時から比べて、だいぶ左の卵巣が大きくなってるね。」
「あの、以前多嚢胞性卵巣症候群かもしれないって言われていたのですが」
「うん、それじゃなくて、内膜症がひどくなって、卵巣のまわりにもできているような状態(チョコレート嚢胞という病名であることが後に判明します)になってるの。
大きい病院で手術してとってもらうか…でも手術すると、妊娠しにくくなることもあるからここでは判断できないですね。妊活の方は、あれからどうですか?」
 
実は…と私は今まであったことをすべて話しました。
夫が精索静脈瘤の手術をうけたこと。手術を受けても、回復の見込みはなさそうだということ。顕微授精しか、妊娠する可能性がないこと。体外受精に踏みだす勇気はもてなかったこと。

話している間、心がひりひりと痛むのを感じました。
 
先生は、じっと私の話を聞いてくれました。
今までつらかったね、と声をかけてもらった途端、私は涙がとまりませんでした。
 
「体外受精は、どんなことが不安なの?」
「何かこわいことをやるイメージがすごく強くて。もしやったとしてそれで赤ちゃんに何か障がいや病気を背負わせることになってしまったら、と思うと先には進めないんです。」
「まず、ひとつ言えるのは、自然妊娠と体外受精によって生まれる赤ちゃんに、そうした病気や障がいをもって生まれる差はほとんどない、と言われているということ。自然妊娠した人も同じように、そうしたリスクは0にはならないということです。だから、不安なのはわかるけど、そこを心配しすぎることはない。体外受精をしても、そこからきちんと着床して、無事に生まれるというのは結局のところたまごそのものの力によるところが大きいんです。
それに、ご主人の精子だって0というわけではないでしょう。1匹でもいるんなら、まだまだ希望を捨てなくてもいいと思いますよ。大丈夫。確かに大変なことは多いですが、もう一度がんばってみませんか。」
 
体外受精に対する不安感が、その時100%消えたわけではありません。
でも、つらい気持ちをはじめて誰かに聞いてもらえたことで、ひとりで抱えこんでいた苦しさがやわらぎました。
そしてお医者さんの言葉を聞きながら、私の中に小さく、体外受精、できるところまでやってみよう、という気持ちが芽生えてきたのを感じました。
 
「……主人ともう一度、よく話し合ってみます。」
「うん、まだ2人とも若いんだから。よく考えて、これからしっかり話あってみてね。」
 
看護師さんも、あなただけじゃない、悩んでいる人もたくさんいるから、とあたたかく励まし、待合室まで付き添ってくれました。
 
通っていた病院では、体外受精やチョコレート嚢胞の手術はできないため、それらをまとめて治療してもらえる近くの大きな病院へ紹介状を書いてもらいました。
 

体外受精に進むかどうか。最終決断。


 
帰宅し、夫にも相談。
もともと、体外受精に不安があったのは私の方です。もちろん夫は賛成でした。
 
体外受精までやっても、うまくいかない可能性だってある。
心にも、体にも大きな負担もある。治療費だって翌年から保険適用になるとはいえ、決して安いものではない。でも、お互い納得できるまで治療をしてみよう。
2人とも同じ思いでした。
 
体外受精の治療を受けることを決意するまで、紆余曲折、ときには気持ちのすれ違いもありましたが、2人で不妊治療を乗り越えよう、と再び前に進むことができました。
 
もちろん、体外受精に進むことがすべてではありません。
大切なのは、あくまで2人で納得できる答えがだせるかどうかだと思います。
体外受精をするぐらいなら、早く区切りをつけて2人で過ごす時間を大切にしたい、という夫婦もいれば、それとは反対に、体外受精にステップアップすることに全く抵抗感がない夫婦だっている。

どちらの気持ちもよく分かります。
大切なのは、2人が納得し、お互い支えあって歩んでいけること。
 
この先、まだまだ大変なことは山ほどあると思うけど、
どんな未来になったとしてもすべて受け入れて、2人で前向きに生きていこう。
 
そう2人で心に決めました。
 
 
つづく>>

 

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