サボテンと多肉
※水曜定期更新「ポジティブあつめ」
昨年母が亡くなったときに、父に託されたものがある。
私が母へプレゼントした、多肉植物とサボテンだ。
母と買い物に行ったとき、母の日か誕生日か忘れたけど
「なにかほしいものプレゼントするよ」
と言ったら
「え、いいよいいよぱたこお金ないんだから」
と断られてしまった。
母は看護士をしていていわゆる「羽振りの良い買い物」が好きだったが、私は非正規で慎ましやかに暮らしていたから、いつも貧乏人扱いされていた。
こんな時くらい遠慮しなくていいのに…と思ったが、
母は言い出したら聞かないので引き下がった。
と、立ち寄った雑貨店で母が
「これがほしい!」
と手に取っていたのが多肉植物だ。
母は多肉植物が好きで、ホームセンターなどに行っては
「かわいいかわいい」
と眺めていた。
「いいよ、買ってあげる。これだけでいいの?」
「こっちのサボテンもかわいい…」
「じゃあ2つ買おうね」
とレジに持って行った。1つ300円、たった660円のプレゼントだ。
でも、うきうき喜んでくれたのがうれしかった。
多肉とサボテンはカラフルな大きめの鉢に植え替えられて、茶の間の茶箪笥の上に置かれた。
母はいつも茶の間のこたつで横になっていたから、いつも見守ってくれたんだろう。
なぜ父が私に託したのかはわからない。
ただ、片付けをしていて邪魔になったのかもしれない(父はそういうところがある)。
ちゃんと育てたいと思いながらも、私の暮らす部屋は西向きで、午後にならないと日が入らない。
みるみる様子がおかしくなってしまった。
多肉植物は表面が黄色くなったり、白っぽいかさぶたができたり、傾いたり…
サボテンは徒長といってひょろひょろ変な形になってしまい、先っちょだけ丸くなったりどうしようもなくなっていた。
植え替えをしたら、子株をどうにかしたら…と、昨冬からこの春をずっと待っていた。
サボテン用の土を買い、多肉が落ち着く小さい鉢を買い、あれこれ準備をすすめ、気温も落ち着いてきた今日、実行した。
植え替えなんて初めてで、根っこがあらわになってハラハラしてしまった。
多肉は根っこがほとんどなく、根元は茶色くなっていた。
子株をカッターで切り落とし、根が生えてくるよう粉をまぶす。
なんとかすべて終え、すっきりした。
でも、すっきりしたことがいいことなのかもわからないし、ちゃんと根付いてくれるかもわからない。
あとは2週間後水やりをする、子株は根が生えたら植える。
母は
「お母さんの多肉とサボテンが~!」
なんて怒ったり嘆いたりはしないだろう。
怒りっぽい人だったけど、そういうことを責める人ではなかった。
「仕方ないよね。
お父さんもあそこに置いたままにしてくれたらいいのにね~」
と、いつものようにこそこそ父の悪口を言いそうな気がする。
この不格好な多肉とサボテンは母が残してくれた思い出。
なんとか生き延びてほしい。
いつか日当たりのいい部屋に住んだら、もっとたくさん植物を育てたい。
母の好きだった多肉植物でいっぱいの棚を作ろう。
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