スクワットと歩行のバイオメカニクス的な関係性
▼ 文献情報 と 抄録和訳
大腿骨寛骨臼インピンジメント症候群に対する股関節鏡検査から6ヶ月後のスクワットと歩行のバイオメカニクス
Cvetanovich GL, Farkas GJ, Beck EC, et al.: Squat and gait biomechanics 6 months following hip arthroscopy for femoroacetabular impingement syndrome, J Hip Preserv Surg. 2020;7(1):27-37.
[ハイパーリンク] DOI, PubMed, Google Scholar
[目的] (i)大腿骨寛骨臼インピンジメント症候群(FAIS)患者において、術後6ヵ月後にスクワットと歩行のバイオメカニクス特性が術前と比較して改善しているかどうかを評価すること、(ii)バイオメカニクス特性をFAISのない対照群と比較することである。
[方法] この前向き研究では、FAIS患者15名と対照群9名の両脚スクワット課題および歩行時のバイオメカニカルデータを、3次元動作解析を用いて収集した。データは、FAIS群では関節鏡下股関節手術後の術前と術後6カ月の2時点で、健常対照群では1時点で収集された。FAIS群と対照群との比較には独立標本のt-検定を用い、FAIS群の股関節鏡手術前後のグループ内の差を調べるためには対応のあるt-検定を用いた。
[結果] FAIS群では、両脚スクワット課題時の矢状面モーメント率について、術前と術後の時点で有意なグループ内増加が認められた(P = 0.009)。術前のFAIS患者は、健常対照者と比較して、両脚スクワットの下降期(P = 0.005)および上昇期(P = 0.012)におけるスクワット速度が遅くなることが、グループ間の差異によって示された。歩行時の股関節外旋モーメントの減少(P = 0.02)も、FAIS患者の術前と健常者の間で見られた。
[結論] FAISの手術前には健常対照者と比較して股関節のバイオメカニクスの変化が見られ、手術後6カ月で関節力学が変化する。しかし、ダブルレッグスクワットと歩行時のバイオメカニクスの違いはわずかであった。
▼ So What?:何が面白いと感じたか?
常々、スクワット時のマルアライメントは歩行時のマルアライメントとどう関係しているのだろう?と考えている。それを明らかにした研究ではないが、歩行だけでなく、スクワットにも着目しているところが面白い。膝関節疾患や股関節疾患など、健常者と比較したスクワット動作のバイオメカニクス的な違いを示した研究はあるが、スクワット動作を一つの評価として定量化できると簡便だしといいなあと思う。今後の研究に期待したい。