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内側型弾発股の献体標本研究と治療への影響

▼ 文献情報 と 抄録和訳

多発性腸腰筋腱:内側型弾発股の献体学的研究と治療への影響

B Lin, J Bartlett, TD Lloyd, et al.: Multiple iliopsoas tendons: a cadaveric study and treatment implications for internal snapping hip syndrome. Arch Orthop Trauma Surg. 2021.

[ハイパーリンク] DOI, PubMed, Google Scholar

[目的] この死体研究は、腸腰筋複合体の解剖学的な変化を記述することを目的としたものである。

[方法] 平均年齢85.6歳、男性13名、女性15名の28名のホルマリン包埋死体から腸腰筋複合体を片側ずつ切開した。腸骨筋と大腰筋の腱の数、コース、幅を決定した。股関節手術の既往のある患者は除外した。大腰筋腱と腸骨筋腱の結合点までの距離と、腸骨筋の最遠位の挿入部までの距離を鼠径の中央部から測定した。

[結果] 腸腰筋の1重、2重、3重の腱の挿入は、28体中、それぞれ12体、12体、4体に認められた。存在する場合、二重および三重の腱は小転子に別々に挿入されていた。鼠径部の中央から小転子の最遠位部までの腸腰筋腱の平均長さは122.3±13.0mmであった。腸腰筋は、鼠径部正中から平均24.9±17.9mmの近位で大腰筋と合流した。すべての症例において、腸骨筋の最外側の線維は、腸腰筋の主要な腱に結合するのではなく、小転子の前面と大腿骨の軸部に非腱性の筋肉の挿入があった。大腰筋腱の平均全幅は、14.6±2.2mm(単一腱)、8.2±3.0mm(2腱)、5.9±1.1mm(3腱)と、腱の数が増えるにつれて減少した(P < 0.001)。

[結論] 本研究の結果は、腸腰筋の複数の腱挿入部が解剖学的変異として50%以上の人に存在することを示唆している。小転子と大腿骨軸の前面部に腸腰筋の非腱性筋肉が挿入されていることは、これまでに報告されていない新しい解剖学的変異である。

▼ So What?:何が面白いと感じたか?

「内側型弾発股=腸腰筋が原因」みたいなことは、調べればなんとなく分かるるが、腸腰筋にこのような解剖学的変異が生じている可能性があることは知らなかった。こうした変異が、弾発股発症にどのように関与しているか、その上でどのように治療していけばよいか、考えていきたい。

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