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リハビリテーション×ゲーミフィケーション

▼ 文献情報 と 抄録和訳

肩の筋骨格系疾患を持つ患者のリハビリテーションにおけるゲーミフィケーションースコーピングレビュー

Steiner B, Elgert L, Saalfeld B, Wolf KH: Gamification in Rehabilitation of Patients With Musculoskeletal Diseases of the Shoulder: Scoping Review. JMIR Serious Games. 2020;8(3):e19914.

[ハイパーリンク] DOI, PubMed(Full text), Google Scholar

[背景] ゲーミフィケーションは、研究においても実践においても重要性を増している。特に、リハビリテーションなどの長期的なケアの過程において、モチベーションやアドヒアランスを高めるために、遊び心のあるコンセプトが重要視されている。これは、神経疾患だけでなく、肩こりなどの筋骨格系疾患の患者の治療にも影響する。リハビリテーションは複数の段階で患者をサポートすることが重要だが、既存のシステムでは単一の段階しかサポートしていないという仮説が立てられている。また、どのようなゲームデザインの要素が使われているのか、どのように組み合わせればモチベーションに最適な効果が得られるのかも不明である。

[目的] このスコーピングレビューは、肩の筋骨格系疾患を持つ患者のリハビリテーションプロセスをサポートするためにゲームデザイン要素を使用している情報通信技術を特定し、分析することを目的としている。適用分野、ゲームデザイン要素、モチベーションのコンセプトに関する技術の状況を明らかにする。

[方法] 関連するアプリケーションシステムを特定するために、スコーピングレビューを行った。検索は3つの文献データベースで行った。PubMed, IEEE Xplore, Scopusの3つの文献データベースで検索を行った。PICO(population, intervention, comparison, outcome)のフレームワークに従い、肩、リハビリテーション、ゲーミフィケーションに関するキーワードとMedical Subject Headingsを導き出し、適切な検索語を定義した。理学療法士と医療情報技師の2人の独立した審査員が、検索戦略で指定された通りに検索を完了した。出版年の制限はなかった。データの統合は、質的内容分析に基づく演繹的-帰納的コーディングによって行われた。

[結果] 合計1994件の論文をスクリーニングし、2006年から2019年までに発表された英語の論文31件を対象とした。その中で、肩の筋骨格系疾患を持つ患者が、通常は自宅で、しかし入院や外来のリハビリテーションクリニックで運動することを支援するアプリケーションシステム27件が記載されていた。アドヒアランスのモニタリングを行っていたのは2つのアプリケーションシステムのみだった。ほとんどが自社開発のソフトウェアを使用していた。最も頻繁に使用されたゲームコンポーネントは、ポイント、タスク、アバターだった。コレクションやチームなど、より複雑なゲームコンポーネントはほとんど使用されていなかった。ゲームコンポーネントを選択する際に、年齢や性別などの患者固有の特徴を考慮したのは2つのアプリケーションシステムのみであった。ほとんどのものは動機付けになると記述されていたが、動機付け効果の評価は通常行われなかった。

[結論] 肩の筋骨格系疾患の患者のリハビリテーションをゲームデザインの要素を用いて支援するアプリケーションシステムは少ない。ほぼすべてのアプリケーションシステムは、自己運動をサポートするエクセゲームである。複数のリハビリ段階に対応したアプリケーションシステムは存在していないようである。また、複雑なゲームデザイン要素はほとんど使われていないことがわかる。また、ゲームの構成要素を選択・実装する際に、患者固有の特性が軽視されている。したがって、リハビリテーションの継続性を高めるための全体的なアプローチが必要であり、患者固有の特性に基づいた動機付けのあるゲームデザイン要素を提供することで、リハビリテーションの全過程において患者をサポートすることが求められている。

▼ So What?:何が面白いと感じたか?

まず、「ゲーミフィケーション」って何?って方は以下の記事を読んで頂きたい。

「辛く、しんどい」と思われがちなリハビリをいかに「ゲーム化」していくか。なかなか定着しない自主トレをICTを駆使しつついかに「ゲーム化」していくか。まだまだ課題も多いだろうが、今後のリハビリテーション分野に必須の要素であることは間違いなさそうだ。


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