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「永遠に年を取らない方法」【エッセイ】

 21歳の頃、仕事をしながら夜は地元(秋田)の高校に通っていました。卒業の年、正月休みを札幌で数日間過ごしました。転勤で故郷に戻る前は、札幌で働き、同じように定時制高校に通っていました。札幌で在籍していたクラスの忘年会に出席するのが目的でした。

 忘年会が終わり、2次会に参加しました。その会の途中で、看護師をしていた同級生から「もう、出ましょう」と声を掛けられました。他の同級生には用事が出来たと言って、その店を出ました。二人ともかなり酔っ払っていました。

 彼女との出会いは、ストーカー被害の相談を受けたのがきっかけでした。学校の帰りに、私は彼女を病院の近くにある寮まで、徒歩で毎日送って行きました。その後に付き合い始めたのですが、今から想えば恋というよりも友人関係だったのかもしれません。

 タクシーに乗った時、彼女は運転手に行く先を告げました。その場所を聞いた時に、私は戸惑いました。そこはホテル街でした。タクシーを降りて、真直ぐにある旅館に入りました。そこで私達は一夜を共にしました。

 でも、彼女に触れる事はありませんでした。私が泥酔していたせいもありますが、彼女から意外な告白を聞かされたのが原因でした。彼女には遠距離恋愛をしている恋人がいて、私と付き合ったのは、寂しさを紛らわすためだったらしいのです。

 次の朝、早番の彼女を私は病院までタクシーで送りました。「じゃあ」「元気でね」が彼女との最後の言葉になりました。あれからもう40年以上が経ちました。

 私の心の中で、彼女は永遠に21歳のままで生きています。そして彼女の心の中でも、私は純粋だったあの頃のままで生きているのかもしれません。


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