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光害関連ニュースまとめ 2023年4月

2023年4月の光害関連ニュースです。

地上の光害に関するニュース

南六呂師に光害対策照明 大野市星空保護区認定へ点灯

2023年4月2日、中日新聞ウェブサイトに掲載された記事です。星空保護区認定を目指す福井県大野市南六呂師(みなみろくろし)地区に、光害対策照明が取り付けられたということです。

大野市が南六呂師地区を世界的な「星空保護区」に申請

そして、大野市が正式に「星空保護区」の申請を国際ダークスカイ協会に提出したというニュースが4月26日のNHK News Webに掲載されていました。審査には数か月から半年かかるということですが、吉報を待ちましょう。

美しい星空、見えますか?アイヌ伝承の物語、アメリカの「光害」展で上映

2023年4月7日、北海道新聞ウェブサイトに掲載。これまでにここでもご紹介しているアメリカ・スミソニアン自然史博物館での光害に関する展示で、星空にまつわるアイヌの伝承が紹介されているそうです。アイヌに限らず、世界中に星空と人々の関わりを示す物語が伝わっています。むかしから、星空と人は深くつながってきました。光害で暗い夜空が失われ星が消えていくことは、そのつながりも弱めてしまうかもしれません。

深セン西涌が中国で初の「ダークスカイ・コミュニティ」に認定 広東省

2023年4月7日、人民網日本版に掲載です。経済発展がまだまだ続く中国ですが、初の「ダークスカイ・コミュニティ」が認められたとのことです(国際ダークスカイ協会のニュースはこちら)。ダークスカイ・コミュニティは、自治体単位で暗い星空を守る取り組みを実施している地域が認定されます。日本では、岡山県井原市美星町がダークスカイ・コミュニティとして認められています。今回認められたのは1700万人が住む深セン市の中心部から東に60kmほどと比較的近い場所。大都市からの光害は避けられないでしょうが、南シナ海に開けた地域は南側に暗い空が広がっているのかもしれません。

「光害」の死亡リスク、死因別に検討

2023年4月8日、読売新聞の医療サイト「ヨミドクター」に掲載。人工衛星からとらえた人工光の明るさと死亡リスクを中国国内の579地域で調査し、これらに正の相関があるという研究結果が紹介されています。が、人工光が強い都市部と人工光が弱い郊外とでは生活スタイルや大気汚染の度合いなど、人の健康に及ぼすさまざまな要素に違いがあることが想像できます。今回は相関関係であって因果関係という話ではありませんので、結果の解釈や使い方には注意が必要です。その意味では、タイトルは誤解を招きそうな表現になっていますね。

野生動物を守りたい?電気を消そう

2023年4月5日にNational Geograophicに掲載された記事です。国際ダークスカイ協会が公開した光害に関する調査報告"Artificial Light at Night: State of the Science 2022"をもとに、ホタルや鳥など生き物に対する人工光の影響について詳しく報じています。「大気汚染や水質汚染と違い、光害は即座に解消することができる。」という言葉が印象的です。不要な明かりを消す、余計な方向に光が飛ばないように傘をつけること、人や車が近づいた時だけ照明がつくようなセンサーをつけること、さらにはカーテンやブラインドを閉めるなど、害を及ぼすかもしれない光の源を断つためにしなくてはいけないことはそれほど複雑ではありません。

光害と関係した衛星コンステレーションに関するニュース

世界中にインターネット提供へ、衛星通信会社「ワンウェブ」の衛星群が完成

2023年4月4日、マイナビニュースに掲載された記事です。日本ではソフトバンクも出資する衛星通信会社ワンウェブが計618機の衛星ネットワークを構築したことで、いよいよサービスインに向けて動き出しました。SpaceXのスターリンクが4000機を超える人工衛星を上げているのに比べると数分の1ですので、天文観測への影響はスターリンクほどではないかもしれませんが、ともあれどれくらいの明るさで見えるのかは要注目です。ワンウェブの衛星の軌道高度は約1200kmとスターリンクより2倍ほど高いため、太陽の光を長い時間浴びることになり、夕方はより遅い時間まで、明け方はより早い時間から地上から見えることになります。

楽天モバイルが導入の「AST SpaceMobile」、打ち上げ延期–1号衛星を2024年に

2023年4月6日にUchubizに掲載された記事。こちらは楽天が出資するASTスペースモバイルの衛星通信網に関する記事です。ワンウェブやスターリンクと違って、ASTスペースモバイルは一般的なスマートフォンと人工衛星を直接通信させることで、人工衛星を「宇宙にある携帯基地局」として使うことを目指しています。地上にある普通の基地局とスマホの距離はせいぜい数kmといったところでしょうが、衛星は数百km上空を飛んでいますので、ASTスペースモバイルの衛星はけた違いに弱いスマホからの電波をとらえる必要があるわけです。このために衛星(に搭載するアンテナ)はとても大きく、試験衛星BlueWalker3は1等星並みの明るさで見えたという報告もあります。今回のニュースは、試験衛星ではなく本番の衛星の打ち上げを遅らせるというもの。通信の技術試験が簡単ではない、ということなのでしょう。

と思っていたら、4月26日に楽天モバイルがBlueWalker3とスマホの直接通信に成功したというプレスリリースを発表しました。衛星打ち上げ・アンテナ展開から続報がなかったのでどうなっているのだろうと思っていましたが、成功のニュースが届きました。試験はアメリカで行われたもので、都市部のようにそこらじゅうにスマホがある場所ではまた通信状況も変わってくるのだろうと想像しますが、実用化にむけて一歩前進、ということになるのでしょう。打ち上げが延期された本番衛星は試験衛星よりずっと大きくなる見込みですので、反射光の明るさがどれくらいになるか注目です。なお、現在の国際的な電波の利用規則(無線通信規則)では、人工衛星と一般的なスマホが直接通信することは認められていません。これが認められるのはどんなに早くても次の次の無線通信規則改訂時(2027年)になるんじゃないかと思いますので、法制面の取り扱いについても注意して観ていかなくてはいけません。

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