マゾヒスティック・リリィ・ワークス『Rafflesia Arnoldii ダメ百合短編集』
文学フリマで最初から入手しようと思っていたものが2つある。そのうちのひとつが、前回紹介した『1篇の詩に対する60日間の考察の記録』。そしてもうひとつが、この『Rafflesia Arnoldii ダメ百合短編集』だった。以前に読んだ『ダメ女子的映画のススメ』が「確かにこれはダメだ」という内容で映画批評として独特の切り口で臨んでいたので、「百合」というテーマに対しても、ほかのサークルとは違った作品が読めるのでは、という期待があったのだ。
果たして、赤木杏さんが寄せているふたつの短編「ストリップショーがはじまる」「異常行動のセオリー」ともに、多くの百合作品とは一線を画していると断じて構わないだろう。まず、ふたりの関係性について、いちいち説明しない。次に、その関係が「愛」といったもので結ばれているといったまどろっこしい描写がない。そして、身体以外のものに関する描写が、ほぼ捨てられている。ここにあるのは「性欲」あるいは「性癖」だけだ、といわんばかりだ。このような話の組み立て方、あるいは視点は映画好きらしいな、と思わされた。
となると、ここで遡上に乗せなければならないのは果たして何が「ダメ」なのか、ということだ。「ダメ=惰性」ということならば、ずるずると肉体関係を続けている日々を示唆しているということになるのだが、それは本当に「ダメ」なのか。むしろそれが自然なのではないか。そう思わせる何かが、ふたつの掌編にはある。
いずれにしても、数分の情景を切り取ってあえて説明しない、という「アンチ文学」とも言える作品が読めたのは個人的には新鮮だった。収録されているふたつのマンガも作風・タッチが違っていてそれぞれ楽しめた。
http://pinknomacherie.wix.com/damezyoshi
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?