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オープンマインド・ヒューマンネットワーク論 その3

執筆:ラボラトリオ研究員 杉山 彰

知識の可視化・可値化という、新しい可能性が実現した。

(1)「喋っただけではお金にならないから、企画書にしないとね」
(2)「あの人は、何やら電話ばかりしているけど、仕事しているの?」

この(1)と(2)のふたつの会話には、高度情報化社会、そして既に始まっている、それも始まって久しい知識社会において、最も重要な意味と目的と価値が秘められている。飛び交う<ことば>は目に見えないから定価のつけようがない、という事実である。この事実を言い替えると、知識は目に見えないものだから定価のつけようがないとも言える。なぜなら、どちらも目に見えないもので、どちらも現象としての、日々の事実を積み上げた成果だからだ。そして、そのどちらも、いまの社会における企業の会計システムには計上できない品目だからだ。

しかし、考えてみると、あらゆる企業の職場を飛び交っている<ことば>は、実は知識そのものといえるのではないだろうか? たとえば、営業部門のAさん、開発部門のBさん、管理部門のCさんたちの日々の業務をじっと観察すると、そのほとんどが<ことば>を駆使しての業務であることがわかる。それこそ、受付のDさんの業務にいたっては100%が<ことば>だけが飛び交う業務ではないだろうか。

しかし<ことば>だけの業務だから、その価値もそこそこだなんて判断してしまうと、とんだ大火傷を負いかねない。Dさんが日々の業務としてやっている受付の<ことば>のやりとりを365日テープに録音して綿密に分析してみると、ある日、営業のAさんに、プロジェクトの相手先の最高責任者のEさんから一刻を争う確認事項の電話が入っていた。ところが受付のDさんは、当然のようにいつもどおりの規則で決められた杓子定規の応対をしたため、その電話の取り次ぎを最優先しなかったという事実が判明した。結果は、連絡ミスにより相手先の不快感をかってしまった。企業の命運をかけたプロジェクトの失敗の大きな原因をつくってしまった働きを、Dさんは無意識のうちにやっていたのである。しかし、この事実を誰も責めることはできない。<ことば>でやりとりしている業務を詳細に評価し査定するシクミも認識さえもない企業に、この事実を監査する資格は存在しないのである。

知識を可視化・可値化させ、企業資産・企業資源として変換し、蓄積することを可能にする文字コミュニケーション。しかし現実は、約4千年前に人間が文字を使う能力を見いだしたときから今日まで、その価値を具現化した人間社会は、いまだに存在していない。

理由は簡単である。一つには<ことば>コミュニケーションによる成果を、知識の大きな部分であるとする認識がない。そしてもう一つは、いくら文字コミュニケーションが4千年以上の歴史を積み重ねようとも、<ことば>を継続的に文字に記述し、継続的に蓄積し、継続的に知識データベースとして革新していく経済性が見いだせなかった。コンピュータの普及初期の頃ではあるが、コンピュータを導入しても、その使い方を覚えるまでの時間がもったいないとか、コンピュータの普及を促進すべき中間管理職の人たちにコンピュータ嫌いが多かったという理由など・・・。つまり、コストが合わなかったからである。そしてもう一つは、実はこれが隠された最大の原因であったともいえるが、日々の業務を詳細に記述すると、“あからさま”になってしまうことの都合の悪さであった。(つづく)

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【杉山 彰(すぎやま あきら)プロフィール】

◎立命館大学 産業社会学部卒
 1974年、(株)タイムにコピーライターとして入社。
 以後(株)タイムに10年間勤務した後、杉山彰事務所を主宰。
 1990年、株式会社 JCN研究所を設立
 1993年、株式会社CSK関連会社 
 日本レジホンシステムズ(ナレッジモデリング株式会社の前身)と
 マーケティング顧問契約を締結
 ※この時期に、七沢先生との知遇を得て、現在に至る。
 1995年、松下電器産業(株)開発本部・映像音響情報研究所の
 コンセプトメーカーとして顧問契約(技術支援業務契約)を締結。
 2010年、株式会社 JCN研究所を休眠、現在に至る。

◎〈作成論文&レポート〉
 ・「マトリックス・マネージメント」
 ・「オープンマインド・ヒューマン・ネットワーキング」
 ・「コンピュータの中の日本語」
 ・「新・遺伝的アルゴリズム論」
 ・「知識社会におけるヒューマンネットワーキング経営の在り方」
 ・「人間と夢」 等

◎〈開発システム〉
 ・コンピュータにおける日本語処理機能としての
  カナ漢字置換装置・JCN〈愛(ai)〉
 ・置換アルゴリズムの応用システム「TAO/TIME認証システム」
 ・TAO時計装置

◎〈出願特許〉
 ・「カナ漢字自動置換システム」
 ・「新・遺伝的アルゴリズムによる、漢字混じり文章生成装置」
 ・「アナログ計時とディジタル計時と絶対時間を同時共時に
   計測表示できるTAO時計装置」
 ・「音符システムを活用した、新・中間言語アルゴリズム」
 ・「時間軸をキーデータとする、システム辞書の生成方法」
 ・「利用履歴データをID化した、新・ファイル管理システム」等

◎〈取得特許〉
 「TAO時計装置」(米国特許)、
 「TAO・TIME認証システム」(国際特許) 等

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