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ヘラクレイトスとアルテミス神殿とこどもと遊び

40数年前、某哲学者からドイツ語と古典ギリシア語でエペソスのヘラクレイトスを教えてもらった。既にエレアのパルメニデスフェチだったが、このふたりは何処か似ていると思った・・。

DK.22A1.. 「アルテミスの神殿へ退いて、子供たちと一緒に骰子遊びをしていた。・・君らと一緒に政治に与るより、こんなことをする方がましじゃないか”と言った。」

アルテミスの神殿模型 エペソス博物館

ヘラクレイトスが子供たちと遊んでいた頃のアルテミスの神殿は、とても立派だったが、現在では、廃墟と化し、石柱が一本立っているだけである。

アルテミスの神殿遺跡にある一本の石柱

もともと、アルテミスはギリシア先住民族の原始信仰を古代ギリシア人が取り入れたようである。山野の女神であり、野獣、熊と関係がある大地母神であり、妊婦たち・子供たちの守護神であり、ギリシア神話では、狩猟・貞潔の女神、月の女神、闇の女神ヘカテーとされ、ローマ神話のディアナ,月神セレネともされるとのこと。

アルテミス像 エペソス博物館

「闇の人」ヘラクレイトスは、“自然について”(宇宙について/政治/神学)をアルテミスの神殿に奉納したとDK.22A1は報告する。

Selcuk に滞在中、2度目のアルテミス訪問だった。エペソスでもそうであったが、どうしても、ヘラクレイトスの残像を求めてしまう。子供と遊ぶ「闇の人」ヘラクレイトス・・そういえば、「遊ぶこどもは神のすぐ横にいる」と言ったギリシア哲学者がいた。

キリスト教の使徒パウロ『エペソス人への書簡』『使徒行伝』などで巡礼地と化したのか、たくさんの観光客が来ている。乳母車を押したお母さん、幼いこどもたちも、アルテミスの神殿の一本残った石柱の礎石にのっかって遊んでいる。

アルテミスの神殿の一本の石柱上のコウノトリの巣

たった一本立っている石柱の頂上には、コウノトリが巣を作っていた。母鳥が巣をしっかり守り、父鳥が周囲を飛びながら警戒している。

アルテミスの神殿の一本の石柱上を舞うコウノトリ

偶然だろうが、そんな、ヘラクレイトスを彷彿とさせる事象がアルテミスも連想させてくれる・・・不思議な空間だった。

             哲学者 故泉治典先生に捧ぐ。
                   12.May.24  大塚櫻


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