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飽き性

なんでもすぐ飽きる。この性格には困ったものだ。
治すものでもないし、付き合っていくしかない。

そんな僕でもちょっとだけ長く続いたことがある。長いと言っても4年くらいかな。それは、髪色を変えないこと。

まあそもそも僕はアーティストでもなければフリーランスでもなく、一般のサラリーマンなので、好き勝手に髪色を変えられる職種でもない。

僕のオリジナルの髪の色は白い。
年齢の割にめっちゃ白い。もちろん黒い部分もまだ残っているが、大体の人は綺麗に染めていると勘違いしてしまうほどに。サラリーマンで白く染めている人はいないだろうといつも心の中でその言葉を飲み込む。

ここ3年くらいは白を続けてきていた。白は本当に飽きない。
なぜなら徐々に白が進行していく過程が実はあって、変化がないようで進化しているからだ。周りの心無い人間は老けだとか言ってくる人もいるが、わかっちゃいない。僕は高校生の頃から白髪染めをしている大ベテランだ。わかっちゃいない。


話を戻そう。
この飽き性な僕を楽しませてくれた白い髪色には悪い気もするが、ふとした時に突然黒にしたくなった。これは飽きというよりは衝動だ。

普段は白髪の松重豊さんが孤独のグルメの撮影には黒染めして臨む時の気持ちと同じといえば、それはとてつもなく言い過ぎだ。僕はただの衝動だ。

3年ぶりくらいに行う一大イベント。まぁ30分くらいで終わってしまった。

今の気分はどうだろう。鏡の前に立ち、僕自身に尋ねてみる。黒くなった気分はどうだ?

僕は僕じゃないように見えた。誰だこの人間は。ちょっとハニカんでいるこの人間は。僕は数ヶ月の間、この人間と付き合っていくしかない。

それから数日経った今、ハニカムことも忘れたこの人間と毎日鏡の前で顔を合わす。長年連れ添っているその顔を見ればわかる。

黒に飽きたんだろう。

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