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都会に生き物のすみかを作りだす ~How Toビオトープ ざっくり解説〜

こんにちは。parkERsブランドコミュニケーション室の森です。

花のある暮らし、植物と過ごす生活、自然のリズムを取り込みながら、ここちよい暮らしを送っている方は最近ますます増えている気がします。

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今回は、植物を愛でるだけでなく"生き物が暮らす住みかを作りだす "「ビオトープ」をテーマに記事を書いてみます。そもそもビオトープってなんだっけ?ぜひ話のタネに見ていってください。

地球を豊かにする大きな取り組みを知ることは、一息つくのもやっとな忙しい生活の中でよりスローライフな目線をもつことに繋がるかもしれません。

ビオトープ=生き物が暮らせる場所

そもそもビオトープとは、ビオ=バイオ、トープ=生息域 からついた言葉で、生き物にとって必要な環境が保たれている場所のことを言います。

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そのためparkERsのオフィスがある港区で言うと、たくさんの生き物が暮らす「明治神宮の森」なんかもビオトープと言えますし、案外みなさんの身近にも生き物たちが立ち寄るビオトープが存在しているかもしれません。

トップ画像は、大手町にある「大手町ファーストスクエア サンクンガーデン」。人が集う都会のオアシスをコンセプトに2017年にデザインさせていただきました。

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本格的な実施調査はしていないものの、竣工から3年が経ち蝶やトンボがいたという声をちらほら聞いたのでここもひとつのビオトープになっているかもしれませんね。

そんな案外身近にあるビオトープについて、今回は生きとし生けるものに対してparkERsの中でも人一番熱い想いをもつ、プランツコーディネーターの森さんに紹介していただきます!

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parkERs プランツコーディネーター 森大祐さん
獣医学部の生物環境学科で学んだ、生態系や環境の専門家。生きとし生けるものへの愛情の深さはparkERs随一。ブレイクダンスが踊れる新米パパ。ビオトープアドバイザーとして、parkERsでアクアリウムの提案も行なっています。夢は、parkERsの動物園を作ること!


なぜ生き物の住みかは必要なのか? 

土地が荒れ、生き物がもともと住んでいた場所に住めなくなると移動せざるを得ません。そうしていくうちに生き物の生息域が限られてきて奪い合いになり戦ってしまうことで、いずれ地域からある種の生き物がまったくいなくなる...。

バランスが崩れることで、例えば普通に食べていたものが食べられなくなったりと、人間の生活にもさまざまなところに影響が出てくるのが生態系のバランスが崩れる、ということです。あるべきバランスが成り立っているからこそ今わたしたちは"普通に"暮らせています。

都市開発が進み、生態系のトライアングルが崩れ荒れた土地を再生し、再び生き物に住みついてもらい生態系を安定させるためにビオトープは作られています。


ビオトープができるまで  〜ざっくり解説〜

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ではビオトープは実際にどのように作られ機能しているのか。あえて細かいことは省いて、4工程で"ざっくり" わかりやすく分けてみました。

STEP1: 目的を定める

②どんな環境を作るか決める

何のためにビオトープを作るのか、総合的に考えることが第一ステップ。

・地域の自然保護のため?
・子供の環境学習の施設として?
・公園として使うため?

ここで人と自然の比率をどこにおくかを見極めます。

すべての土地を森にすれば良いわけではなく、そこでは人間も生活する必要があります。生活する環境に緑地しかなければ残念ながら人の生活は成り立たず継続しません。だから生き物にとってだけではなく、人間にも生活しやすい環境を総合的に考えていくことが大切です。人の生活圏の中でビオトープを作る場合は、生活に悪影響を与えないような作りをして価値を出すことが重要です。

STEP2: 地域環境の調査

③実地調査

目的が定まったら次はどこに作るのかを決め、そこはどんな風土でどんな在来植物や生き物がいるかを把握します。

都市部、郊外、森の中...
作る場所によって調査の規模もやり方も変わります。

方法としてはなんとも原始的で、虫の行き来を観察して数を数えたり、野鳥を調べたり、歴史を調べたり。そんなことをして土地の風土を知っていきます。

STEP3: いざ施工!

④施工


目的と環境が定まれば、復元する植生や生き物が自ずと決まってきます。例えば「トンボの里を作る」「蛍が集まる川辺を作る」「メダカの小川」など。

ここまできたら作り方が決まります。例えば池を作るのか、川を作るのか、はたまたどっちも作るのか。浅瀬のように土を盛る必要はあるのか、そこに水草はいるのか...など。

肝となるのは、その土地に転がる石や倒木もそのまま使うこと。これが生き物にとって安心感を与える要素となります。

新しく慣れない環境に緊張する、というのは人間も同じですね。

STEP4: ④調査の継続⇄生き物に利用してもらう

生き物の多様性の調査はビオトープが完成したあとも続きます。むしろここから、計画が成功だったかどうかがはっきり分かってきます。

成功を判断するのは人ではなく自然

虫などの生き物が、ビオトープを見つけ継続的に立ち寄るようになって初めてビオトープの完成になります。この継続的な観察はとても重要で、もしうまくいかなくても、問題を見つけ改善することに繋がります。

⑤子供の環境教育の場に

環境について考える教育の場として活用したり、

⑥観察会の実施

観察会を実施することで地域に根付くビオトープを継続していくことも大切です。暮らしているのは人間だけでない、広い視点に立ち返るきっかけにもなってくれそうです。

こうして生き物が立ち寄ってくれるようになり、生き物が暮らしやすい環境が整い、生態系が安定していく。やることは単純ですが、未来には地球規模で影響の出る意味のある取り組みです。


身近なところから、いざスタート

今回恐らくどこよりもざっくりと、ビオトープをご紹介させていただきました。ちょっと壮大に見えたかもしれないビオトープ作りですが、庭やベランダでやる場合も同じ流れです。
①呼びたい生き物を決める。
②水草や植物をなるべく在来のものを入手。
③生き物が隠れられるスペース(石や木、水草多め)と、開けたスペース、バランスを整える。

⑦ベランダビオトープ

家の庭やベランダでビオトープをつくって、街にひっそり暮らすトンボや蝶々、小鳥たちが立ち寄るようになってくれたら嬉しいですよね。

お子さんの生き物への考え方にもよい影響が与えてくれる取り組みにもなりうるのでは??


「地域の人の憩いの場所になるビオトープが増え、里山のような都市ができて、多様な生き物も暮らしている...それが日本の風土らしさになっていけば良いのにな。」とプランツコーディネーター森さん。

「ビオトープは成果が見えるまで時間がかかるから人には認知されにくく、広がりにくくなっているかもしれません。美しい見た目だけじゃなくて、未来に残っていくものが正解だと思っています。少しでもその手伝いをしていきたいと、ビオトープアドバイザーの資格をとったり活動に参加したりして活動しています。
parkERsのオフィスでは「室内で生態系がつくれるか?」ということを実験していて、メダカやエビが暮らすビオトープを作って実験しています。」


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壁面緑化と水槽が一体になり、水が循環する仕組み。

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「parkERsとしてもビオトープ管理士を呼んで社内向けに講義してもらうなど、日々勉強中です!」


忙しい毎日の中で、わたしたちの側でひっそりと暮らす生き物たち。そんな生き物たちの憩いの場づくりで、地球のための第一歩を踏み出してみてはいかがでしょうか。


この記事を書いた人は

parkERs ブランドコミュニケーション室
森美波

春は待ちどおしい、
でも花粉もピーク。
毎年複雑な思いになる時期になりました。