業務変革とDX (1)

企業内部から業務変革に携わっている。今どきの業務変革は、ほぼ必ずと言っていいほど、いわゆるDX(デジタル化。広い意味で)が含まれる。守秘義務に触れないよう、数社の経験から自分なりに解釈したことやコンセプトとして一般化したことを書いている。具体性を欠いている点についてはご容赦いただきたい。

業務変革やDXと聞いて真っ先に思い浮かぶのは、生産や物流、商流などのSAPが得意とするERP領域だろうか。それとも、Eコマースやデジタルマーケティングなどのセールスフォースが得意とする領域だろうか。確かにERPやデジタルマーケ領域は、世の中全体の案件としては多い部類であるし、SAPやセールスフォースなどの台頭する市販品の存在もあって、一般的にはよく知られている。しかし、私が携わってきている領域は、そのどちらでもない。

企業の外からは目に触れることのない、事業企画開発の部分。そう、企業の差別化や競争力の源ともいえるコアな部分である。

要件が業界ごとに異なり、また、同業界でも企業ごとに異なる。そのためであろう、システムインテグレーションをすればすぐに使えるような市販のアプリケーションがない領域だ。何かしらの市販アプリケーションをベースにする場合でも、業界や戦略に合わせたかなりのカスタマイズが必要だ。

企画開発される事業内容などのコンテンツそのものが競争の源であるのはもちろんのことだが、業務プロセスがよいコンテンツを生み出すようファシリテートできるものでなければならない。コンテンツだけに頼るのは、事業担当者の属人的な部分に頼ることになり、人材確保や維持に企業業績が揺さぶられボラティリティが大きくなる。少なくともある程度のレベルのアウトプットがプロセスにより維持できれば、人材変動によるアウトプットの質や量のボラティリティを下げられる。業界にもよるが、企業にとっては、こちらの方が長期的な優位性となりうるともいえる。プロセスはパフォーマンスに影響し、貢献するということだ。

そういった意味で、プロセスは平均や底上げを行えるが、頂点となる秀逸なパフォーマンスは、属人的な秀逸さを必要とすることは認める。しかし、組織の長期的な成長のためには、全体の期待値を上げることも重要だ。特定の少人数だけの才能に頼るだけでは企業の存続は危うい。もちろん、秀逸なプロセスと秀逸な属人的なものが組み合わされば、鬼に金棒であることは言うまでもない。

また、よいパフォーマンスをファシリテートできるプロセスを経験した若手は、人材市場でも求められる。これにより、社内昇進もせず転職もできないという滞りを防ぎ、その分、属人的な優秀者を厚遇していくことも可能になろう。

(つづく)

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