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【 ZINE REVIEW 】 COLLECTIVE エントリー ㉚ 赤木 遥 『花たちへ』(埼玉県さいたま市)

COLLECTIVE 2020。あっという間に半分の会期が過ぎ去っていきました。本当に時間が経つのが早い。例年になく、たくさんの人にきていただき、たくさんの ZINE が売れていきます。目当てのものと、その日気になったものをセットで買っていく人が多いように思います。うれしいですよね。思いもよらぬ『モノリス』的な出会いが、不特定多数の人たちのあいだで連続しているのですから。おかげさまで、このレビューで気になっていて、実物に触れて、買うにいたった、なんて話も聞きます。うれいいことですね(レビューに書かれた ZINE はオンラインショップでも取り扱ってます)。ZINE は、花を買って帰るみたいな気持ちで手にしてみるといいかと思います。心をちょっとだけ鮮やかにしてくれるっていう意味では似てるかと思います。

自分の知的欲求を満たす、美しい花のような ZINE を、探してみてください。

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花は、買おうと心に決めた時、想像力が膨らんでて気持ちがいい。部屋の窓辺の、部屋の花瓶の、どこに何の花を添えようか、選んでいる時が楽しい。店先の花を見ているだけでうれしい。いつもの好きな花。飾ったことのない少し高い花。花を買って、家に帰るまでの道のりさえも凛々しい。みんなが祝ってくれてるような気持ちにさえなる。そして、家で花を飾る時、少しだけ厳かな気持ちになる。慣れたはずの行為も、少しだけ、背筋がのびる。あとはただただ枯れていくのを見つめるのか、ドライにしてもう少し楽しむか、だけれど、やはりいつか朽ちてしまう。写真ならあの花たちは、ずっと輝く花のままでいれるなと、僕も思う。

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埼玉からエントリーの写真家・赤木遥さんの ZINE『花たちへ』は、毎日のように自宅の窓辺に花を飾る、作家による花の記録。花への言葉と、花の写真で構成された一冊。まさに花を買って帰る感覚で、楽しむことができる1冊。もちろんプレゼントとしてもとても気が利いている。赤木さんのことはもう過去に何度も褒めている気がするので、いまここで写真をまた褒めるというのもなんだけれど、ゆっくりていねいに1冊の作品集や、展示を汲み上げる作家気質の人が、COLLECTIVE という企画に呼応して、ワンアイデアで反射運動のように1つの作品集をしなやかに作った、という事実がうれしい。言葉とデザインと、思い立ったら作れてしまうっていうのもすごいけれど。作品を ZINE にしてしまうことをよく思わない写真の背景、文脈があるのは知ってる。けれど、もうこういう SNS 時代を迎えてみると『作家性』というのは足かせのようだなと思う。写真を大切にする気持ちと、行為が二人三脚じゃなくてもいいのだ。好きな靴を履いて、見たい景色をたくさん見に行けばいいという時代に、写真家という靴は、誰をどこに運んだのだろうか。彼らはずいぶんナルシシスティックで窮屈で退屈な世界にいやしないか。もっとフィジカルにいこう。

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裸足でいいから今は止まらずに走りたいのだと笑う赤木さんの顔が浮かんでくるような1冊でした。止まらないことが写真に対して敬意を払う行為だってこともある。とにかく作ることが赤木さんの写真をもっともっとよくしていくと思った。


レビュー by 加藤 淳也(PARK GALLERY)


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作家名:赤木 遥(埼玉県さいたま市)
写真家。1987年埼玉生まれ。東京造形大学卒。なんでも撮りがちです。
https://www.instagram.com/p/B_MduPllUkL/?igshid=dpmzv67i6yki
【 街の魅力 】
家しかないところ。
【 街のオススメ 】
① Cafe&Jazz Shoji ... ジャズが流れていて(しかもレコード)、優しい美味しい手作りのご飯が食べられる。お店の人がみんなあたたかい。
https://www.instagram.com/cafe.jazz.shoji

② 埼玉県立近代美術館 ... 年に何度かど渋く攻めた内容の展示をしています。ぜひ。
https://pref.spec.ed.jp/momas
【 同じ地域で活動するひと 】
先述の shoji のスタッフの yuu さん / 歌うたい。綺麗で甘い声の人。




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