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【 ZINE REVIEW 】 COLLECTIVE エントリー (56) 西原 雨天 『50鬼夜行』(東京都台東区浅草)

コロナ禍中で開催されてきた COLLECTIVE もいよいよ残るは5日。「夏には落ち着いてるっしょ」と思っていたが大間違いだった。ピークを過ぎたというけれど、感染しないというわけではない。0か1しかない。なるときはなる。風邪みたいに、かんたんに復帰できるわけではないから、いま、ぼくやスタッフが感染したら、お店や仕事は立ち行かなくなってしまうし、たくさんの人に迷惑がかかってしまう。こんな小さな店にもたくさんの人が訪れてくれて、毎日のように賑わいを見せていたけれど残り5日間、気を引き締めないとなと思う。ワクチンができたところで、ベッドの数が確保されたところで、経済がまわったところで、と、嘆きに近いため息をつきながら、祈るような気持ちで毎日を過ごしている。政治には頼れないから、神頼みの日々でございます。なんまいだ〜なんまいだ〜。

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オリジナルの妖怪を50体描いた

浅草からエントリーの ZINE『50鬼夜行』は、アニメーション作家の西原雨天さんによるミニ画集。妖怪たちの群れ、または行進の様子を表す『百鬼夜行』の半分の50の妖怪が描かれている。しかもその全ての妖怪が西原さんによる想像(創造)のものというのだからすごい。妖怪のルーツといえば、アミニズムから派生した精霊・山岳信仰によるものや、当時の人々が理解不能だった科学的な現象(雷とか)を認識するために具現化したもの、座敷童のように、第六感的な気配、空気の中から感じ取ったものの可視化、祈りから派生したもの、キャラクター的に捉えたエンタメ化させたものなど、様々な派生が考えられる。例えばアマビエは疫病退散への祈り。あのかたちになった理由はわからないけれど。東日本大震災が起きた 3.11 の前夜、天災を予言する半人半牛の姿をした妖怪を福島のバイパスで見たという自衛隊員のエピソードは都市伝説かもしれないけれど、一瞬背筋が凍った。『件(くだん)』という妖怪で、江戸時代から目撃情報が寄せられている(ほんとかいな)。

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西原さんの描く妖怪も、1匹(妖怪の数え方は匹?)ずつ眺めていくと、妖怪になってしまったルーツを想像して楽しめるもの、造形としてとにかくうつくしいもの、シンプルに動物が変形したようなもの、絵巻の中に本当にいそうなもの、その反対に洋服を着た現代風のものとバリエーションが豊富で楽しい。「みんな違ってみんないい」的な。妖怪と言ってしまえばそれまでだけれど、人に置き換えた時にそれを『個性』と思えば、なんだか全て愛らしい。肌の色、目の色、顔の形、体の形、喋り方、考え方、みんな1人だって同じ人間はいないのだから、『異なもの』を妖怪としてきたのであれば、我々もみんな妖怪みたいなものだし、妖怪の存在もこの長い歴史の中で、まぁない話じゃあないだろうなとも思えてくる。鬼のルーツは漂流してきたロシア人だとかね。

世の中を楽しむなら、なるべく『偏見』を抜いて、世界を見た方がいい。

西原さんの、妖怪の描き方は、それぞれの『個性』をいかに導くか、という作り方のように思う。ウィークポイントや、嫌われ者の世界に、光を灯してあげる作業とも言える。そう見るとなんだかあたたかなクリエイティブがA4見開きの1枚に詰まっている。もちろんこんなふうにあまり深く考えずに、ざっと妖怪の並んだ LINE スタンプのようなものとして楽しむのももちろんありです。友達と名前とかその妖怪の特技をつけて遊んだりね。

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西原さんのインスタでは妖怪以外の絵も見ることができます(全部妖怪に見えてしまうから不思議)。気になった人はぜひ、会場で SNS で。

コロナを終わらせる妖怪、出てこい!


レビュー by 加藤 淳也(PARK GALLERY)


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作家名:西原 雨天(東京都台東区浅草)
動画、イラスト、ロゴマーク等の制作に従事する傍ら、CGアニメーションと水性ペンで未知のバケモノを描く活動をしている。
インドカレーが大好物。
https://www.instagram.com/uten.saibara
【 街の魅力 】
どんな人でも受け入れられるような懐の広さ、ごった煮感。
【 街のオススメ 】
Readin’ Writin’ BOOKSTORE ... 世界を温かくまなざしているような、素敵な選書の本屋さん。
http://readinwritin.net

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