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【 ZINE REVIEW 】 COLLECTIVE エントリー (59) 芝山 健太 『trifle magazine』(東京都国分寺市)

COLLECTIVE も残り2日。週末を残すのみ。かなり寂しい。もっと ZINE について語り合いたい。作品についてあーだこーだ言いたかったな。編集者やデザイナーを呼んだイベントも1年目みたいにやる予定だったし、東京勢が多かったので、レセプションパーティもきっと盛り上がっただろう。コロナ野郎のせいでできてない、いっぱい。残りの2日間に集中させようと思う。まだ会えてない人、あいさつをしただけでゆっくり話せてないひと、土日はフルで会場にいるので、ぜひ話しましょう。手作りのパークコークも用意してます。

さて、このレビューもなんのスケジュールのさじ加減もなしにちょうど最終日に終わりそう。1日1日のレビューはまるで日記をつけるみたいで楽しかった(まだ終わりじゃない)。コロナで生活習慣が変わって、なかなか新しいペースをつかめないでいることもあって、感情の起伏が激しいし、体重は増えるし、仕事は減るし、たまったもんじゃない。でも、こうして、たくさんの表現者の吐き出す言葉や絵、写真たちとのレビューという名のセッションは、ぼくの心を安定させてくれます。「いまを生きている」と記すこと、残すこと、これが ZINE の魅力であり、ぼくらのコミュニケーションに必要不可欠な要素なんだと思う。今日も SNS や画用紙、メモ帳や日記帳、もしくはカメラのファインダーに向かって「いまを生きている」と声のない声をあげているみんなの上を、ブルーインパルスが飛んだらいいのにな。いや、誰に祝福を受けることなく、虎視淡々と、生きることを続けようじゃないか。

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ささいなこと

さて、今回紹介するのは、写真家で映像ディレクターの芝山健太くんの ZINE『trifle magazine』。trifle は「ささいなこと」という意味。コロナによる緊急事態宣言が発令中の5月1日から、5月31日までの間に自分の意思で記録した5人それぞれの『日記』をまとめた1冊で、企画・編集を芝山氏が、そしてデザインを、COLLECTIVE でも人気の『MIZO ZINE』が手掛けている(ちなみに MIZO ZINE の写真は芝山くん)。エントリーだけでいうとほぼトップバッター。告知と同時にエントリー。きっと写真の ZINE なんだろうなと思ったら、まったく違った切り口だった。しかも名前、プロフィールはあれど、どこか掴み所のないアノニマスな3人の女性と、表現の意思の強い俳優志望の女の子、そして作者の芝山くん本人の5人からなる不思議な ZINE が届いた。なんだろう、大友克洋のアニメの中の世界で描かれた日記、みたいだ。ネオトーキョー。同じ世界にいそうでいない。けど確かにいる。
『緊急事態宣言』が発令され、かなりの緊張感とプレッシャーを、メディアは与え続けてきた。それぞれがそれぞれ、STAY HOME という得体の知れない甘い蜜のような言葉に騙されながらも孤独を払拭するために、なんとなく、生きてみた。見えない敵に怯えながらも、生きなければならないと強く思った。でも実際のところ、それぞれがどう生きていたのかというのはあまり見えてこない。実際『trifle magazine』から溢れ出てくる日記は、とにかく『ささい』。いや『ささい』というのではなくて『おおげさではない』のだ。SNS はどこか大袈裟で、ぼくらの心を必要以上にかき乱す。大袈裟な奴の話は信用してはいけない(ぼくの話もそう)。べつになにも大袈裟にせずに、自分の生活の、目や手が届く範囲で、向き合って話をしよう。そうすればもっとわかりあえると思う。そんな感じが、日記を編集する行為から伝わってくる。そこにある事象をそのまま受け止めているための本。

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写真家の彼がなぜ日記を、と深読みしたくなるけれど、そんなに深い意味はないのかもしれない。写真家が『記録』をなりわいとするのであれば、誰かの記録を集めて、本にするというのはごく自然なことだなと思う。だからこれはコロナ禍の本ではなく、たまたまコロナ禍だっただけで、誰かが見た景色を再生するための共通言語としての言葉での記録と、写真での記録の比較なんじゃないかと思う。日付を入れた写真っていう文化があるように、だんだん、日記が写真に見えてくる。言葉を拡張した世界が、それぞれ、自分の暮らしのフィルターで再生されて、映像で現れた時、これは写真集として見れると思ったな。不思議な1冊。言葉と映像が横断する。冒頭に一枚、写真があればきっともっと、それぞれの日記が、映像的に生き生きとしたかと思うけれど。

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時々、シンプルに、投げ捨てるように、いつか枯れる花のように、うつくしい言葉がある。その言葉探しをするだけでも、楽しめる ZINE です。そして、芝山氏の写真がいい。後半お楽しみに。


レビュー by 加藤 淳也(PARK GALLERY)


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作家名:芝山 健太(東京都国分寺市)
1994年群馬生まれ。
映画「よどみなく、やまない」@渋谷uplink、名古屋シネマスコーレ
https://shibayamakent.tumblr.com
【 街のオススメ 】
でんえん ... 喫茶店
https://goq2.tamajiri.com/coffee




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