COLLECTIVE レビュー #11 Non. 『Blooming!』(福島県)
5年も COLLECTIVE を続けていると、SNS を追ったり、新作の ZINE などを手にすると作家の変化にも気づけたりもする。成長とか、浮き沈みとかそういうことではなく、あくまで「微細な変化」。それは言葉にできる時もあれば、言葉にできない時もある。
今回、何がどう変わったのかわからないけれど、4年前から写真を断片的に見てきて、少しだけ変化を感じた作家の ZINE を紹介する。
COLLECTIVE 2022 ZINE レビュー #11
Non.「Blooming!」
Non. さんの写真をはじめて見たのは2018年の COLLECTIVE。静岡からエントリーで、詩と写真の共作での ZINE が印象に残っている。その後、福島の郡山(こおりやま)という地に移住をし、撮りためたフォトジン『夏のみどりしろの冬』。引っ越しをしてからの2年間の空気を撮りためた1冊だった。
今年届いたのは、続編ではないにせよ、郡山での暮らしを地続きに感じることができる ZINE『Blooming!』。
「花が咲く」を意味するタイトルの通り、郡山で彼女が見てきた、花のある風景が28ページにわたって続く。昨年の作品が「夏」と「冬」ならば、今作は「春」。撮影のために用意した切り花や、わざわざ赴いて撮った花というのではなく、暮らしの中に自然と咲き誇る花たちが、花らしい佇まいで記録されている。カメラを持って歩いていたら、花があったから撮ったという感じ。カメラを持っている時間が長いのだろう。
郡山市主宰で、郡山の魅力を写真で発信する「郡山写真部」に所属し、普段から街を歩き、風景を切り取るというフィールドワークを行なっている Non. さんならではの視点、そして物語が、何気ない景色の中にもあらわれている。きっともっとこの街にはたくさんの花が咲いて、もっとたくさんの風景を彼女は知っていると思うけれど、いま、ここ、と思う瞬間があるのだ。その中でシャッターを切ったのだ。
移住することで改めて意識するようになった「変化」。普段、何気なく過ごしているうちは感じることはないかもしれないけれど、年に1度だけ、儚く訪れる、春という季節からだけ切り取ることができる変化。節目(変わり目)だからこそ生まれる意識。
言葉にするのは難しい感覚だし、写真のテクニックとか、質感とか、そういうのはわからないけれど、Non. さん自身が写真に近づいていく、という時代が終わって、写真が(被写体が)、Non. さんに近づいてくるという時期へシフトしているかもしれないなと思う。それは旅人じゃなくて住人になるような感覚に似てる。同じ場所にいても、旅人の日記と、そこに暮らしている人たちの日記が違うように、ZINE 『Blooming!』は、いまゆっくり開花する。
春というのはそういう季節だと思う。
レビュー by 加藤 淳也
---- 以下 ZINE の詳細とそれぞれの街のこと ----
【 ZINE について 】
昨年、夏と冬をテーマに photo zine にまとめました。今回は春。引っ越してから毎年春が待ち遠しく感じ、あたたかくなると私はカメラを手に軽やかに出かけました。時間帯で違う色、香り、表情。そんな私が過ごした日々の中、咲き誇る一瞬をシャッターにおさめ今回一冊の zine にまとめました。
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