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エキシビジョンレポート 大橋裕之『越境』@ 阿佐ヶ谷 VOID

2008年、仲間たちと一緒に会員制の漫画雑誌を月刊で作っていた。子どもの頃、漫画を描いていた経験がある友人たちを集めて、毎月ゲストを呼び、バンドマンを中心に、コラムなども添えて毎号100ページくらい。1年続ければ新しい世界が見えるはずだと。

確かに狂ってた。


年会費5000円で購読してくれると毎月1日に漫画雑誌が送られてくるという、いま考えたらどういう風に採算を取ろうとしたのだろうかと頭を抱えるが、何を隠そう、はっぴぃえんど、高田渡、加川良、遠藤賢司らを輩出した日本初のインディーズレーベル URC(アンダーグラウンドレコードクラブ)のマネです。量産せず、在庫を抱えず、本屋に頼らず、欲しい人が現れた時にだけ、刷って、届ける。その代わり自由に表現させてください。2000年代の、売れるように描く、とか売れるように歌うとか、器用さが求められる資本・経済主義とクリエイティビティを引き剥がしたかったという、ぼくらなりのカウンターであり、アンチテーゼだった。送料さえもったいないので、自転車で行けるところは直接届けた(今思うと怖い)。よくいえば早すぎたクラウドファウンディングだった。

お金より大変だったのが編集長としての締め切りの催促だった。友人相手に半分キレ気味で原稿を催促して、けんかもした。懐かしい。

中でも必ず締め切りを守り、毎号ぼくらを楽しませてくれたのが大橋裕之くんだった。ちょうどクイックジャパンで連載をしたり、少しずつ漫画家として活躍し始めていた頃に連載を依頼し、快諾してくれた(かどうかはわからない)。タイトルは『孤独メカ・グレート・ロンリー』。ロボット漫画だった。

当時のブログ

干支が一周して、2020年。もう立派な人気漫画家となった大橋裕之くんの個展『越境』を阿佐ヶ谷 VOID で見てきた。

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相変わらずという感じの中に、うっかり落とし穴に落ちてしまったかのようにグッと感情を持っていかれる瞬間が潜んでいて、ずっと変わらない姿勢の中にも、年輪というかシワのようなものを見た気がする。

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漫画の1コマを描くのと、1枚の『絵』を描くときの違いってなんだろうか、とかそんなことを考えながら何度も何度も見返したけれど、答えは特にでるわけでもなく、店員の小澤くん(元パークスタッフ)とおしゃべりをして帰った。

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漫画本を買うと大橋くんのラフドローイングのようなものがもらえるみたいで、買ってみた。大橋くんの最大の特徴とも言える(最大の発明ともいえる)『目』が描かれているものは即なくなってしまったらしい。残念に思っていたら、グレート・ロンリーの主人公っぽいキャラを見つけたので、それにした。

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あの時よく一緒に遊んでた前野健太くんが売れて、追いかけるように大橋くんも売れた。ぼくだけいまだにスニフティみたいなことやってる。阿佐ヶ谷の風が目に染みた。

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阿佐ヶ谷の冬は寒い。中央線の新宿から先の街の雰囲気が苦手。にぎわってるのに誰も干渉していない感じ。商店街の活気とぬくもりが、一層さみしくさせた。

通りがかったラーメン屋でラーメンを食べた。おいしかった。

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大橋裕之『越境』

今日までです。

お見逃しなく。


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大橋裕之 個展「越境」
@ 阿佐ヶ谷 VOID
11月19日(木) - 12月6日(日)
15:00 - 20:00
入場無料

\ パークも本日最終日 /


港町カレンダー 2020 - 2021 / 原画展『生きている風景』
会期:2020年11月18日(水)- 12月6日(日)
13:00-20:00 / 入場無料 / 月火定休
PARK GALLERY(東京・末広町)
東京都千代田区外神田3-5-20
最寄駅:末広町駅・湯島駅・秋葉原駅・御茶ノ水駅(距離順)
http://park-tokyo.com

パークギャラリーに居るひと
加藤淳也

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