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【 完結 】 COLLECTIVE 2021 レビュー

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COLLECTIVE 2021 に集まった ZINE を紹介していきます。会期中の間にひとつひとつレビューをアップしていきます。タイトルに【 REVIEW 】がついているものをぜ…
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#東京都

COLLECTIVE INFORMATION

8月に PARK GALLERY で開催された、47都道府県さまざまな地域を拠点に活動するクリエイター・アーティスト・表現者による ZINE の展示・販売エキシビジョン『COLLECTIVE』の、九州への巡回が決定しました! 巡回先は九州は佐賀の温泉街『嬉野』にある人気のコーヒースタンド『おひるね諸島』です。川沿いの元保養所をリノベーションして生まれた『おひるね諸島』には、本屋、ギャラリーも併設されていて、佐賀市街地はもちろん、福岡や長崎からもたくさんの若者が集まる話題のお

【 レビューあり 】 鈴木愛美子 『 ITW(In the wind)』 東京都

ZINE レビュー by 加藤 淳也(PARK GALLERY) 下北沢の片隅にある小さなカウンターだけのバーで働いていたのはもう20年も前。壁はタバコのヤニにまみれ、客が少ない時はテーブルの上を堂々とネズミが横断するようなお店。若きバーテンダー気取りこと僕は、おいしいお酒を提供する努力よりも、客とのおしゃべりの質や、いかにお酒に合ういい BGM を選曲をするかに凝っていた。ビートルズやストーンズはもちろん、レッド・ツェッペリン、ピンク・フロイド、ジャニス・ジョップリン

【 レビューあり 】 Oo! 『SOUTH SUPERMARKET』 東京都

ZINE REVIEW by いのうえ あかね(PARK GALLERY) 先日 COLLECTIVE 2021 は閉幕しましたが、最終日ギリギリまで届き続けた全ての ZINE のレビューを1冊残らずお届けしていきます! 
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 ー 言葉のおもしろさ、地域の魅力は国境を超えて 台湾出身で東京在住の作家、Oo! (オウ)さんによる、とってもクールZINE が届いた。タイトルは『SOUTH SUPERMARKET』(サウススーパーマーケット)。興味深い! Oo! さ

【 レビューあり 】 杉本憲一 『ざっしょく』 東京都

ZINE REVIEW by いのうえ あかね(PARK GALLERY) 小学生の頃、移動図書館バスが定期的に学校に回ってくるのがとても楽しみだった。いつもの学校の図書室とは違った本と出会える貴重なタイミングだ。バスの中に並ぶたくさんの本の中から、借りられるだけの絵本や紙芝居、文庫本をたくさん借りて満足感を得ていた。そのほとんどが、おはなしが難しくなくてかわいいイラストのものが多かったな。そんな小学校時代を送ってきたので、いまの年齢になってもわかりやすい内容の絵本やか

【 レビューあり 】 相馬涼 『CLASSIC!!』 東京都

ZINE REVIEW by いのうえ あかね(PARK GALLERY) わたしがギャラリーで働きたいと思ったきっかけは、イラストが好きだったからである。地方出身のわたしなのだが、上京するまでは SNS やインターネットで出会える範囲のイラストレーターの情報量だけ。そうしていま上京して、夢だったギャラリースタッフとして働き、たくさんの作家さんや仲間と出会い、すてきな作品や作家さんを紹介してもらって、“好き” にとことん触れ合えるといった、充実した毎日を送っている。そん

【 レビューあり 】 おちゃのまガールズ 『裏道』 東京都

ZINE REVIEW BY 加藤 淳也(PARK GALLERY) 東京新聞が運営する STAND UP STUDENTS というウェブマガジンの企画と編集を担当している。「学生に新聞を契約させる」というマーケットを想像した時に荒野しか見えなかったので、舵を切り直し「どんな社会にしたいか」「どんな社会であるべきか」という問いを学生に投げて、答えてもらうことにした。その『声』から新聞の役割、必要性を導き出せるのではないか、という前提で、最初の1年は52人の学生に会って話

【 レビューあり 】 伊藤健介 『世田谷区』 東京都

Review by 加藤 淳也(PARK GALLERY) 東京に上京する前から世田谷に住むと勝手に決めていた。都心から離れれば離れるほど家賃は安くなり、部屋も広くなるという東京の住宅事情は知っていたけれど、譲らなかった。 最初に暮らしたのは下高井戸徒歩3分。4畳半の独居房のような1R。5階建ての5階。カーテンのない部屋からは甲州街道と首都高が見え、夜になるとオレンジの街灯が眩しい。眠れない夜は屋上にあがって、車の走る音を聴きながらタバコを吸ってビールを飲んだ。 学

【 レビューあり 】 近藤学 『猫背で小声』 東京都

ZINE REVIEW by 加藤 淳也(PARK GALLERY) PARK GALLERY がはじまったのがだいたい7年前くらい。いまの店舗は2軒目。もともとギャラリーをやるなんて思っていなかったけれど、知り合いが働いていた障がい者の自立支援施設が、施設利用者のためにと、小さなガレージを無料で借り受けたのがきっかけだった。 障がい者が自己実現できる場づくりをプロデュースする、という最初は「お仕事」としての依頼で、フリーランスに転身したばかりだった僕は、仕事を探して

【 レビューあり 】 友田もえ 『名は体を表す』 東京都

ZINE REVIEW by いのうえ あかね(PARK GALLERY) ことわざ『名は体を表す』… 物や人の名前は、その中身や性質を的確に表すことが多いということ。 「体」とは、本質、実体の意味。 このことわざを意味する、文学的でユニークな内容の ZINE が届いた。 東京都在住の作家、友田もえさんによる ZINE『名は体を表す』は、漢字の形をものになぞらえた、象形文字的イラストレーションの作品集となっている。 イラストレーター兼グラフィックデザイナーの肩書きを

【 レビューあり 】 酒井恭成 × 佐々木涼平 『妄毒のシッポ』 東京都

ZINE REVIEW by いのうえ あかね(PARK GALLERY) 『妄毒のシッポ』 
すこし奇妙なタイトルの、ショートコミック ZINE が届いた。 
表紙を見てみると、シュールなキャラクターであやしい雰囲気をかもし出している。さて、どんなストーリーが繰り広げられるのか … このショートコミックの物語を考えイラストを描いているのは佐々木涼平さん、そして編集・デザインは酒井恭成さんといった、2人3脚で制作された1冊となっているそうだ。それ以上の情報は明かされて

【 レビューあり 】 SUI THE TOKYO 『Nisemono』 東京都

ZINE REVIEW by 加藤 淳也(PARK GALLERY) 東京に上京して先輩にはじめて連れてってもらったクラブが恵比寿の『みるく』だった。いまとなっては伝説のクラブだ。地下へ続く階段。たばこのにおい。ズンズンと体の奥で響くビート。雑誌で見て知ってたけれど、山形から出て来たなかりの18歳のぼくにとっては禁断の世界。缶ビールをチビチビと飲みながら(節約)眩しいネオンの中、クラゲのように音楽に揺れていた。いつしかスピーカーの前が居心地いいことに気づき、特に無理して

【 レビューあり 】 polaris 『記憶と記録』 東京都

ZINE REVIEW by 加藤 淳也(PARK GALLERY) 小学6年生の時に、近所のレンタル CD ショップに取り憑かれて、おこづかいやお年玉を CD のレンタルに注ぎ込んだ。その時たまたま借りた『今夜はブギーバック』という CD が僕の人生を狂わせることになる。いや、厳密に言うと、『今夜はブギーバック』が収録されていた『ポテンヒッツ』というスチャダラパーのアルバムの中の『Get Up And Dance』という曲を聴き、進むべき道が決まった。 ヒップホップ

【 レビューあり 】 土屋ハルナ 『At the end , it turns into a jewel.』 東京都

ZINE REVIEW by いのうえ あかね(PARK GALLERY) 全国から届いた全81冊もの ZINE に囲まれながら、『COLLECTIVE』最終日を迎えた。作品集に自作の小説、コミックにエッセイなど、ほんとうに様々な ZINE が集まった。参加者の中には、普段はサラリーマンに OL、大学生に専業主婦など、アーティストに限らず『COLLECTIVE』をきっかけに ZINE を作りたくなったと言ってくれる人もいたりした。それで1年越しに参加してくれた大学生のふ

【 レビューあり 】 ivy × カワジリユウヤ 『往来』 東京都

ZINE REVIEW by 加藤 淳也(PARK GALLERY) 20代の半ば、長めの期間で無職になったことがある。仕事先での人間関係が怖くなり、ストレスを抱えてやめたこともあって、転職も躊躇していた。少しの貯金を切り崩し、親からの援助を受け、酒を飲みたい時は先輩を呼び出しておごってもらい、服や CD、漫画を売って、パスタを茹でてレトルトのソースをかけてその日を食い繋ぐ。そんな生活を送っていたのに、ある日、渋谷のビックカメラで衝動的に Macbook を買ってしまっ