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【 レビューあり 】 土屋ハルナ 『At the end , it turns into a jewel.』 東京都

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ZINE REVIEW by いのうえ あかね(PARK GALLERY)

全国から届いた全81冊もの ZINE に囲まれながら、『COLLECTIVE』最終日を迎えた。作品集に自作の小説、コミックにエッセイなど、ほんとうに様々な ZINE が集まった。参加者の中には、普段はサラリーマンに OL、大学生に専業主婦など、アーティストに限らず『COLLECTIVE』をきっかけに ZINE を作りたくなったと言ってくれる人もいたりした。それで1年越しに参加してくれた大学生のふたりや、挑戦してよかった!と話してくれた作家さんだったり、ものづくりや発信することへの興味と行動力であふれている人たちを目の当たりにすると本当にキラキラと眩しくて、うれしいきもちでいっぱいになる。この COLLECTIVE は “全国” から気軽に参加できるという売りもあるので、顔も声もお互い知らない作家さんもたくさんいる。エントリーメールのやり取りやこのレビューを書くことで、少しでも距離が縮まっていたらいいなと思う。また来年も参加したいと思ってくれていたらうれしいな。インターネットが普及している今、目には見えない人との関係性や記憶は、いろんな方法で一瞬でも何度でも、生まれていることを実感する。

今回紹介したい ZINE は人の関係性や記憶の愛おしさを描いたイラストエッセイ集。東京都在住の作家・土屋ハルナさんによる ZINE『At the end , it turns into a jewel』。このタイトルには、「記憶が風化していく過程で結晶化し、優しい思い出や辛い思い出だとしてもキラキラと輝く面を持ち合わせている。」といった思いが込められている。

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ふるい記憶、それを思い出すたびに感情が1滴、2滴とたれて着色され、今覚えていることは正しい記憶とは変わってしまう。そんな朧げ(おぼろげ)で、変わり続けていく記憶を愛おしく思い描いたイラストたちを1冊にまとめたという。

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普段から、人や物の関係性や記憶の不可逆性をテーマにイラストを描いているという土屋さんの、その本望がこの1冊からは読み取れる。柔らかい表現と色使いで描かれる者たちの表情は、安らかでどこか儚げな雰囲気を持っている。

キラキラとどこかに消えてしまいそうに語りかけてくるメッセージには “記憶の風化” が上手に表現されている。独り言のようなものなのに、そのイラストや言葉に感情が持って行かれてしまう。優しい思い出や辛い思い出だとしても、その場面のキラキラとした美しさに、愛おしさを感じてしまう。この1冊の ZINE で人間らしさを実感する。なかなか言葉や感情にできなかったことを、土屋さんの作品が代弁してくれている。

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自分が持つ “記憶” がある限り、その全てを大切にしたいなと思った1冊だった。自分自身と正直に向き合う時間がほしい人には、ぜひ読んでほしいと思う。

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レビュー:いのうえ あかね(PARK GALLERY)


---- 以下 ZINE の詳細と街のこと ----


【 ZINE について 】

タイトルには、記憶が風化していく過程で結晶化し、優しい思い出や辛い思い出だとしてもキラキラと輝く面を持ち合わせている、といった思いがあります。

というのも、今回のコンセプトは人の関係性や記憶の愛おしさです。ふるい記憶、それを思い出すたびに感情が1滴、2滴とたれて着色され、今覚えていることは正しい記憶とは変わってしまう。そんな朧げで、変わり続けていく記憶を愛おしく思い描いたイラストたちを1冊にまとめました。

価格:¥880(税込)
ページ数:32P
サイズ:148 × 148mm


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作家名:土屋ハルナ(東京都千代田区)

武蔵野美術大学造形学部基礎デザイン学科卒業
手描きのようなタッチや柔らかい表現、有機的な表現が得意。無意識な行動や痕跡を観察すること、好きな音を探すことが生きがい。人や物の関係性や記憶の不可逆性をテーマに描き続けている。

https://www.instagram.com/harunoillustarchive
https://twitter.com/tenohirahotaru

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