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COLLECTIVE 2022 ZINE レビューまとめ

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COLLECTIVE 2022 に全国から集まった ZINE を PARK GALLERY 加藤が1つ1つ向き合いレビューしていきます。まだ触れたことのないパーソナルな ZINE… もっと読む
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#東京都

COLLECTIVE レビュー #59 犬スタ『っぽい顔にみえる。』(東京都)

パソコンが使えるとかデザインができるとか、文章が書けるとか、そういうことは ZINE をつくるうえで一才関係ない。前回のレビューでも書いたように、書きたいなと思うことと自分に似合った道具さえあれば OK 。ルールやマナーもいろいろありそうだなと思ったけれど、ないと思う。例えばこれを読んでいるひとで、ZINE が作りたいのだけれど、パソコンやデザインがハードルだと感じてしまってる人がいたら、一度、紙に何か思いついたことを書いてみて、コンビニでスキャンして、プリントして、その部分

COLLECTIVE レビュー #58 ZINEつくろうよ!『ONE DAY ZINE TRIP No.1』(東京都)

2018年から5年間、毎年甲子園のように続けてきた COLLECTIVE も今年で終わりだ。2、300冊くらいの ZINE に触れて、それらをこうして言語化してきた。とにかく言えるのは、ZINE というのは気軽で、その気軽さからプレーヤーも増えてきていて、その種類は千差万別だということ。クオリティよりも大事なのは中身で、それは作らされてるものであってはいけない。「好き」な気持ちが充満しているべきだし、ついつい衝動的に、動いてしまっているものであってほしいし。作ったあと、たくさ

COLLECTIVE レビュー #57 MIYA『明日も良い!』(東京都)

パークは台湾となにかと縁がある。旅行先としてシンプルに好きだというのはもちろんなんだけれど、パークのディレクターの加藤は(ぼくは)2011年~2012年に、台湾を拠点に日本でもブームを巻き起こしたオルタナティブバンド「透明雑誌」のジャパンツアーを手がけたメンバーのひとりでもある。透明雑誌とその仲間たちとの交流が、その後の台湾とのカルチャー的な交流を活性化させた。 透明雑誌は活動休止してしまっているけれど、現在メンバーはそれぞれ、台北のユースカルチャーを牽引する2つのストア

COLLECTIVE レビュー #56 Yuu『The A to Z of Feeling 』(東京都)

「作るのが難しいので納品数が限られてしまうのですが、大丈夫ですか?」 47都道府県、全国各地から公募で ZINE を集め、展示しながら販売するエキシビジョンCOLLECTIVE の募集をかけてしばらくすると、そんなメッセージが届いた。5~10冊くらいの納品が基本になっているけれど、特にルールというわけではないので OK ですと伝えた。それよりも「作るのが難しい」という表現が気になってワクワクしていた。 「手作りがいい」「手作りであるべきだ」というわけではないけれど、誰

COLLECTIVE レビュー #53 dayoung cho 『ㅂㅗㅁ,ㅇㅕㄹㅡㅁ,ㄱㅏㅇㅡㄹ ,ㄱㅕㅇㅜㄹ』(東京都)

20年サイクルで生み出されると言われるファッションの流行の波。確かに少し前まで20代の子たちのあいだで、GAP や POLO を代表する90年代のミドルスクール的なストリートファッションが流行していたように思う。コロナ禍になるとそういったフィジカルなファッションの子が減り、わりとシックでタイトなモードとルーズな古着をミックスさせたようなカッティングエッジなファッションが目立つようになる。音楽活動をはじめた2000年のはじめころ、そういう仲間がたくさんいたように思う。 振り

COLLECTIVE レビュー #52 Nobu Tanaka『みんなの思い出』(東京都)

もう10年以上も前、色の褪せた「レトロ」なことよりもヴィヴィッドでキラキラした「アーバン」なことが求められた時代、デジタルカメラ勢に押され、静かに「製造販売終了」を待つだけだった「写ルンです」を街中のカメラ屋からかき集めて、友人たちと、行く先々のパーティや旅行をひたすら撮影していたことがあった。街の在庫では足らず FUJIFILM の本社に赴き「写ルンですをください」と頼んでみたら「こんなのもう誰も使わないから」とでも言うかのように、たくさんの在庫をくれた。呼吸するかのように

COLLECTIVE レビュー #49 奈良都民『奈良都民のおえかき』(東京都)

歴史の先生が生理的に嫌いで、歴史の授業があまり好きじゃなかったという理由で歴史があまり好きではない。そんな僕が NHK の大河ドラマ「鎌倉殿の13人」に、熱中している。源頼朝が、鎌倉に幕府を立ち上げるその前後を描いたいわゆる鎌倉時代の話。できるだけ史実に基づき、人気脚本家で演出家の三谷幸喜が脚本を手がけている作品だ。 毎週日曜日を楽しみに、本作を追っていると、自然と鎌倉時代についての知識が身につき、詳しくなっている。学生時代に解けなかった問題が、今なら解ける気がした。歴史

COLLECTIVE レビュー #47 グーシック花里咲『INHERITANCE』(東京都)

友人が以前「ZINEって買うって決めた時がピークだよね」って言っていて、なんかやけに納得したことがある。 買う時がピークというのは、悪くいえば「帰ってからはあまり見返すことはない」ということでもある。ただ、書店やうちみたいなギャラリーや雑貨屋で瞬間的に「感動した」「激しく共感した」、または「ピンときた」りするのだろう。それはレジに持っていってお金を払う瞬間ではなく、「買おう」と「決めた」時がピークだ。 そういうぼくも、あとでゆっくり読もうというふうに買うことはあるけれ

COLLECTIVE レビュー #45 チヒロ / かもめと街 『散歩するつもりじゃなかった』(東京都)

最近、ある出来事から日記をつけるようになった。ようし書こうと思うと長々とパソコンに向かってしまうので(それでは続かないと思って)、タイマーをセットして10分だけ書くことにした。もっと書きたいと思っても、悩んで書けなくても10分。誰に頼まれるわけでもなく書きはじめた日記は2ヶ月毎日続いている。日記を書いてみて思ったのは、ぼくの日記はほかの人たちの日記に比べると大雑把だなということ。ただ、不思議と読者と反応が増えてきている。エッセイや短編小説を発表していたことがあったけれど、ここ

COLLECTIVE レビュー #42 諸星朋子 『彼女のはなし』(東京都)

イラストレーターの ZINE が今回本当に多い。自分の作品や作風、世界観を発信するのに、本当に便利な媒体として普及しているのだと改めて感じる。どこかに ZINE を作るレシピでもあるんじゃないかと思うくらい、どの作品もクオリティが一定数で高く、世界観がしっかりとしているから驚く。何冊も向き合ってきて、イラスト ZINE に感じていることをまとめると、 ・ZINE というメディアが持つ「軽さ」に御用心 ・本当にA5版でいいの?としっかり自問自答 ・作りながらワクワクドキドキ

COLLECTIVE レビュー #41 笹川路子 『Michko Sasagawa illustration 01 The Moments』(東京都)

PARK GALLERY はもともと「写真」に関わる仕事をしていたディレクターの加藤(ぼく)がはじめたお店なので、自然に写真の展示が増えていくのかなと思ったけれど、いつの間にか、7:3、いや、8:2くらいでイラストレーターのパーセンテージが高くなった。特にジャンルを絞って「えい!」と展示をやってるわけではないから、「いいものはいい」と言ってるうちに自然とそうなったのだと思う。ただ、自分が感覚的に「好き」な作品ばかり見ていると、視野が狭くなってしまうから、時々、COLLECTI

COLLECTIVE レビュー #40 koji 『DO.DO.DO. doodle note 2』(東京都)

イラストレーターが ZINE という媒体を使って自身の作品のプロモーションに使ったり、展示やグループ展でグッズとして販売するケースが、ここ数年で一気に増えた。オンデマンド印刷が進化して、より簡単で安くなったこともあるし、原画を売ることは難しいけれど、ZINE ならという考えで活動の費用の足しにするということもある。ただ、正直にいうと、出来すぎたカタログみたいな ZINE も増えていると思う。だから COLLECTIVE を通じて、作り方のアイデアを手に入れたり、少し工夫するよ

COLLECTIVE レビュー #39 FTR 『THE RUMBLE FISH』(東京都)

千利休の「好きこそものの上手なれ」と言う言葉がすごく好きで、なにをやるにも好きっていう感情って大事にしてる。 改めて調べてみると「楽しんでやることによってうまくなるものであるということ、又は、あることに熟達するには、それを楽しめるようになることが肝要であるということ」とあって、あ、やっぱり好きだなと思った。 そんな自分も、特に学校に行ったり誰かに師事したりするわけでもなく、クリエイティブなことが「好き」というだけで、いまフリーランスのディレクターとして仕事をするまでにい

COLLECTIVE レビュー #38 くしだみさき 『コクーンの島』(東京都)

子どもの頃、将来の夢は漫画家で、休み時間のすべてを漫画の制作にあててた時期があった。いわゆる無地のノート「自由帳」は本当に自由な気がしたし、漫画に必要なスクリーントーンや G ペンの存在をうっすら気づきはじめていた年齢ではあったけれど、えんぴつ1つと、読者(クラスの同級生たち)を胸に、とにかくページを埋めてった。クラスで人気の女子の気を引きたいという思いもあったと思う。あの時の漫画に対する熱量は相当だった。 「スラリンの冒険」 というタイトルで、スライム状の液体が旅を