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3−4:顧客はどこにいるか。何を買うか。

顧客は常に複数存在しており、それぞれの欲求は異なっている。だから企業は顧客が誰なのかを把握して、彼らの欲求を満たそうとしなくてはいけません。

でも、どうやって顧客を見つければ良いのでしょうか。
また、見つけ出した顧客は何を買うのでしょうか。

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「顧客はどこにいるか」を問うことも重要である。一九二〇年代にシアーズ社が成功した秘密の一つは、顧客がそれまでとは違う場所にいることを発見したことだった。

「顧客はどこにいるか」について考えることもまた重要です。

例えば、アメリカのシアーズ社は顧客がどこにいるかを正しく考えたことで成功を収めることができました。その歴史を振り返ってみます。

・19世紀末〜20世紀初頭
当時のアメリカに住む人々の多くは農業を営んでいました。彼らの交通手段は鉄道、馬、馬車などです。そのため、彼らは商品を買おうと思った時、時間をかけて都市まで出かけるか、繁華街から商品を仕入れた個人商店や行商人から高い価格で購入するしかありませんでした。ここでシアーズ社は考えました。

「顧客は地方に暮らしていて、商品を買うのに手間を感じている。」

彼らに対してはカタログを配り、事前に大量購入することで安く仕入れた商品を販売しました。まさに現代のダイレクト・マーケティングです。また、カタログ通販に抵抗がある消費者のために、「満足していただけなければ返金いたします」と言う保証の文言も追記しました。

これが大ヒット。シアーズ社はアメリカ中に広く知られるようになりました。

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・1925年以降
急速な経済発展とともに、人口の多くが都市で生活するようになりました。また、フォード社の自動車大量生産に伴い、自家用車を持つ人々が増加しました。こうなることをシアーズ社は事前に予想していました。

「顧客は地方から都市に暮らすようになり、移動は自家用車になる。」

都市郊外に駐車場の広いデパートをオープンさせました。
これもまたヒット。都市に暮らす人々が自家用車に乗って訪れるようになりました。

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顧客が地方に住んでいるなら地方にカタログを配る。
顧客が都市に住み車で移動するなら都市郊外にデパートを建てる。

シアーズ社は「顧客がどこにいるのか」を考えて、戦略を立て、大きな成功を収めることができました。顧客の存在する場所も重要なんですね。

加えて、顧客を考える上でもう一つ重要なことがあります。

次の問いは、「顧客は何を買うか」である。

顧客が何を買っているのかということです。

ドラッカー先生は、「企業が売っていると思っているもの」と「顧客が買っているもの」が同じであることはほとんどないと言っています。

キャデラックをつくっている人たちは、自分たちは自動車をつくっており、事業の名前はGMのキャデラック事業部であると答える。だがはたして、キャデラックの新車に大枚のドルを支払う者は、輸送手段としての車を買っているのか。

アメリカの高級車キャデラックの話は有名です。

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一つだけ質問をします。
「キャデラックの生産者が売っているものはなんでしょうか。」

・・・

「車」でしょうか。確かにキャデラックは車なので、車を売っているという考えは間違いではありません。しかし、顧客の立場で考えてみれば回答は異なってきます。

「キャデラックを購入する顧客が買っている価値はなんでしょうか。」

車という移動手段として価値を感じてキャデラックを購入しているでしょうか。

違います。

顧客が買っているのはステータスシンボルとしてのキャデラックです。

つまり、ダイヤモンドやミンクのコートのように、他人に対して良く思われたいという気持ちからキャデラックを購入しているのです。

そう考えると、キャデラックの生産者は「ステータスシンボルとしての価値」を販売していると考えられます。

この自分たちが売っているものの価値を正しく理解することは極めて重要です。

なぜなら、顧客が移動手段としての価値のために購入しているのか、それともステータスシンボルとしての価値のために購入しているのかによって、企業の販売戦略は異なってくるからです。

もし仮に、移動手段として車を販売する場合、生産者がすべきことは耐久性を高めたり、燃費を良くしたり、価格をなるべく抑えたりすることです。

一方、ステータスシンボルとして車を販売する場合、生産者がすべきことは高級感を最大限高めることです。車内のレイアウトを見直したり、販売を特別感あるものにしたり、接客でも細心の注意を払って応対したりすることです。そのために多少原価が上がったところで富裕層相手では問題ありません。

一九三〇年代の大恐慌のころ、修理工からスタートしてキャデラック事業部の経営を任されるにいたったドイツ生まれのニコラス・ドレイシュタットは、「われわれの競争相手はダイヤモンドやミンクのコートだ。顧客が購入するのは、輸送手段ではなくステータスだ」と言った。この答えが破産寸前のキャデラックを救った。わずか二、三年のうちに、あの大恐慌時にもかかわらず、キャデラックは成長事業へと変身した。

「顧客が何を買っているか」を正しく判断することで、キャデラックは販売戦略を大きく見直し、成功を収めることができました。

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顧客について考える上で大切な質問は2つです。
①顧客はどこにいますか。
②顧客が買っているものは何ですか。

一朝一夕では分かりません。でも顧客の立場から考えてみる必要があります。

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