パリッコの【酩テレ】「幻の川茶屋を探して多摩川を歩く」編、完結にあたり


今年の8月から「酩テレ」と題するYouTube番組の配信を勝手に始めた。

自分が居酒屋その他で気のおけない友人たちと酒を飲んでいる時の決して何も起こらないけれど心地良い感じが好きで、かねてからそういう空気感を映像として残しておきたいと思っていた。
この夏その感情が頂点に達し、RICHOの「WG-M1」というアクションカムを購入。

大きさは片手にすっぽり収まるくらい。
価格もものすごくお手頃だし、きちんとハイビジョン撮影ができて、音声も拾え、なんとカメラのところのキャップだけ取り替えればそのまま水に沈めても大丈夫なんだという。

かなり雑に扱って問題なさそうだし、気軽に持ち歩き、サッと飲みの空気感を切り取るにはもってこいに思えた。
何より、懐かしき90年代の残り香を感じるGショック的デザインが超かっこいい。

で、戦略も何もなく、15分くらいでロゴを作って、ノリでアップロードを開始。
現在までに10分前後の動画を16本公開し、最新「幻の川茶屋を探して多摩川を歩く」はシリーズ最長の全6話、つまり通して見ると約60分というなかなかのボリュームになった。

興味がある方は、たんまりと時間が有り余っている週末の夜中にでも飲みながら視聴して頂ければ。
お酒が飲めない方は、お茶でも飲みながら。


酔狂なことに先日、このプログラムが「TVブロス」の「ネット探偵団」というコーナーで紹介され、約1ページ丸々自分のインタビューを掲載して頂いた。
大変ありがたいと同時に、この記事を見た方が味のある大衆酒場の映像を期待して何気なく「酩テレ」を再生し、中年男性2名が延々多摩川の河川敷を歩いてるだけの最新シリーズを見てしまった時の心中は、察することもできない。


そう、最新「幻の川茶屋を探して多摩川を歩く」シリーズは、ほぼ全編多摩川の河川敷を歩いているだけなのだ。
というか、そうなってしまった。
最終的に登戸の街で3軒の居酒屋をハシゴすることになるが、そのシーンは編集したら最後のたった1話に全て収まってしまい、あとは、ただ歩いているだけ。

ことの発端は自分がとある女性編集者さんから聞いた話。
いわく「何年か前、友人に連れられ、二子玉川からそう遠くない、なんなら徒歩で行ける範囲の場所にある川茶屋のような場所で酒を飲んで楽しかった記憶がある」とのことで、確認すると知名度の高い稲田堤の「たぬきや」、兵庫島公園の「玉川屋」ではなかったという。

これはなんとワクワクする話だと、そういうのが最も好きそうな友人であるチミドロのスズキナオさんを誘い、下調べはあまりせず、実際に川沿いを二子玉川から上流に向かって歩いてみることにした。

実は何年か前に登戸のあたりでバーベキューをした時、川っぺりに掘っ建て小屋のような飲み屋のような建物があるのを見て、いつか行ってみたいと思っていた。
つまり、なんとなく「あそこかな?」と当たりはついていたんだけど、その間にだって誰にも知られていない奇跡のような川茶屋や、謎の飲み屋なんかがあるかもしれない。
そんな期待あれこれを含んだ道中で、「頭がおかしいんじゃないか?」と感じる方が大半だと思うが、自分たちはそういうのが最高に好きなのだ。


で、けっきょくどうだったのか? 未知の天国酒場は実在したのか? その結果は動画を見て頂くとして、シリーズのちょうど中間「その3」の後半あたりに、自分とナオさんが川面に石を投げこみ、起きた波紋を眺めながら酒を飲んでいる場面がある。
かなり引きの映像なので音声もほとんど入っておらず、「素敵でもなんでもない環境映像」といったシーンが数分間続くが、これは奇をてらったとかそういうことではなくて、最近の自分たちはこういうのが本当に楽しくなってきてしまっている。

もはや酒場でなくてもいい。

強いて言えば「環境」とか「味わい」に触れながら酒を飲めればそれで満足ということだろうか。
今回波紋を見ながら飲んだのも本当に優雅な時間だった。


あまり詳しく語っても「もうあいつらには近づかないでおこう」と思われるのが関の山なのでやめておくが、今回のシリーズはうまく説明のつかないそんな感覚を少しは形にして残しておくことができたんじゃないかと思う。
情報過剰なこの時代、たまには見ていてもなんにもおこらないこんな映像で、時間を無駄にしてみてはいかがでしょう?

過去のシリーズはこちらのページにまとめてあります。


ちなみに、最近3年半ぶりのニューアルバム「TANUKI SONGS」が完成したんだけど、これもやっぱりリンクしていて、音でそういう感覚をなんとか表現できないか? というのがテーマの1枚だったといってよいでしょうね。



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