「無意識」活用の展望
2013年、私がPF理論を発想した時の逸話を元に、「ぼんやりのすすめ」というブログを以前書きました。
何か問題意識をもって普段から考えているテーマがあると、それについてある時ふと良いアイデアが浮かぶときがある。
たいていそれは、机に向かって思考を巡らせたり、会議で議論に熱中している時ではないんですね。
風呂に入っている時とか寝入りばなとか、とにかくボーッとしている時に多い。
そんなことを書きました。
「無意識」が手を差し伸べる条件
ただボーッとするだけではダメですよ。
普段から問題意識をもって悩み苦しむ課題を抱えていることが重要。
頭を悩ませ苦しんでいる時、その課題は意識下にある。
しかしボーッとしている時、それは意識されていません、当然ながら。
でも不思議なことに脳の無意識部位は、そんな時もどうやらちゃんと仕事をしてくれている。
脳にはバックグラウンド処理機能があり、無意識下で件の課題をしっかり考えてくれているのです。
そしてその能力は、時として意識を越える。
だとしたら、こんな便利な機能使わない手はないですよね!
無意識を意識的に活用する
でもこの無意識の有能さ、どうやったら駆使できるのか。
重大な課題を抱えている時ほど、ひとまず考えを巡らせるのをやめてみるのです。
もし時間に追われ切羽詰まった状況にあるのでなければ、できそうでしょ?
考え込むのを意図的にストップし、一旦無意識に手渡しこれにまかせてみてはどうでしょう?
20世紀の医学者・O. レーヴィも、同じような経験をしているようです。
脳神経のシナプス間での情報伝達。
これが電気的に行われているのかそれとも化学物質をやり取りしてなされているのかは、当時謎でした。
レーヴィはカエルの心臓を用いた実験でそれが化学物質、今私たちが知るところのホルモン物質によるものであることを証明。
そしてその実験手法を思いついたのは彼が寝ている時、夢の中だったのでした。
侮れない夢の役割
夢に関しては、そのメカニズムやそれを見る理由などまだまだ分からないことが多い。
ただ、記憶の整理や不必要な記憶の消去といった記憶メンテナンスの役割があるとは言われています。
それと関係あるのかないのか、過去の記憶が呼び覚まされることが多いですね、唐突に小学校時代の友人が出て来たり、とか。
脳の下部にある橋(きょう)という部位で生じる脳波が夢に関係しているらしいことは、古来動物実験で伺われていました。
途中から視覚信号と同経路を経由して視覚野に到達することが「夢を見る」現象につながるらしい。
記憶をつかさどる海馬も、この脳波と連動して活動します。
これらのことは主としてレム睡眠時に起こるのであり、寝ている時でも脳は様々なレベルで活動しています。
無意識が夢に作用している可能性も考えられます。
レーヴィさんの、夢でアイデアゲットの逸話はそのことを指し示しているのかもしれません。
「体で覚える」の正体
人の「無意識」がいかに活躍するかについても、夢同様ほとんど分かっていません。
研究者の参入も夢の研究ほど多くないのではないでしょうか。
でも、上述のような課題解決力とかひらめきに対して無意識が持つポテンシャルは、ひょっとしたらものすごいかも。
女子サッカー日本代表チーム(いわゆる「なでしこ」)がワールドカップ決勝でアメリカを破って優勝した時の、澤選手のゴールシーン。
味方選手がコーナーキックを蹴る寸前に、自分をマークする相手選手を振り切って突進。
ちょうど飛んできたボールに足の甲を合わせ、自身はひっくり返りながら浅い角度でゴールネットを揺らしたあのシーン。
※浮かばない方は、下手な私の説明より動画サイトで検索
あのシーンだけ切り取ると、飛び出した澤選手の足元の絶妙な位置にボールが飛んできて、それに右足の甲で、コントロールしにくい右後ろ方向のゴールへ向けて絶妙に角度調整、と全くたまたま決まったとしか思えないプレー。
けど、実際はたまたまなどという言葉で片づけられるものではないでしょう。
脳の処理速度から言えば、視覚情報から脳が信号処理をし全身運動を起動し実行するには0.5~1秒、あるいはそれ以上かかるはずの動作を一瞬で決めた。
つまりこれは無意識の動作と考えられるのです。
日頃からのたゆまぬ訓練と実績をベースとした高い経験値が無意識のポテンシャルを引き出し、ボールの来る位置の予測と足の角度などの調整(フィードフォワード)を目的に沿う形で達成した、と言えます。
タレントの島田紳助さんはかつて、お笑いの中でも大御所と呼ばれる類の人は、要所で面白いことを三つ思いつきその中で一番オモロイのを実際に口に出す、というようなことをおっしゃってました。
だからスベりにくい?
これもひょっとしたら大御所、つまり力量のあるお笑いタレントの無意識は、鍛錬を背景とした能力がある、ということでしょう。
スポーツや芸術、科学研究、発明、極限条件での登山といった冒険など、クリエイティブな活動で発揮される脳の無自覚的かつ底知れぬ能力。
社会としてもっと注目しても良いのでは、と私など思うのですがどうでしょうか?
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