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分離脳と二重人格

アメリカの心理学者マイケル・ガザニガは、分離脳患者の研究で有名。

分離脳とは、左脳と右脳をつなぐ脳梁が切断された脳。

昔は癲癇の治療として行われていたのだそうです。


左脳と右半身、右脳と左半身が連絡しているのは良く知られた事実。

ガザニガは分離脳患者の右脳(つまり左目)に「笑う」という言葉を、

左脳(つまり右目)に「顔」という言葉を見せました。

しかる後、「見た言葉を書いてください」と口頭で伝えると、

患者は笑っている顔を書きました。

ここで、言語を理解するウィルニッケ野は左脳にのみ存在することに注意(右利きの場合)。

見た言葉を書くように指示を受けた左脳は「笑う」という文字を見ていないのです。

なのになぜ笑っている顔を書いたのか?

その理由を尋ねると、

「悲しい顔でも書いてほしかったのですか?

悲しい顔を見たい人なんているのでしょうか」と回答。


実際には右脳が「笑う」という文字を見たのですが、

左脳はその事実を知りません(脳梁は切断されている!)。

だから理由を聞かれた左脳は、

笑う顔を書いた本当の理由を知らないまま別の理由をでっち上げたのです。


この実験が示唆することは興味深い。

そもそも人には自由意思が存在しない、と主張する人もいます。

※私(種市)はこの立場です。

ま、しかしそこまで言わなくとも、

この実験を含め分離脳に関する実験から、

脳は分離されても無意識のうちに互いに矛盾を解消する後付けの理由を作り、

別個の存在としてではなく互いの行動をなんとか調和させて統一された自我を守ろうとする、

ということは言えそうです。


一方で解離性同一性障害(いわゆる二重人格)の患者は、

別に脳は分離などされていないのですが別人格が現れ、

それらは年齢はおろか視力すら異なっている場合もあり。


脳はまだまだ謎に満ちています。

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