見出し画像

科学になり切れない超心理学

念力やテレパシーなどを研究する超心理学の論文を見ていると、やはり扱っているテーマの特質からか、「科学とはなんぞや」を問う科学そもそも論を結構見受けます。

これは結構難しい。

「科学とは○○です」と即答できるようなものではないでしょう。

なにせそれを扱う科学哲学という独立した学問分野があるくらいだし。

ただ、大学の職に就きそれなりのキャリアを積んでいるはずの研究者の主張を分析してみると、なんのことはない、科学者を名乗る人が言っているから科学だ、的な低レベルな認識を露呈していたり。

これについてはかねてよりブログや著作で議論もしているし、今ここで改めてどうこうしないけど、まあ科学者も海千山千ですな。


科学性の四段階

超心理学者・石川幹人が同僚らと共同で独自のウェブサイトを立ち上げ公開する、疑似科学評定
 
そこでは、昨今の健康ブームの中TVでも盛んに宣伝されている各種サプリメントのほか、民間代替医療、生活環境改善をうたう様々な手法(EM菌とかさ)、自己啓発、不思議現象の数々について、それらのトピック一つ一つがどの程度科学的と言えるのかを評価しています。
 
評価にあたっては各トピックごとに、論理性、体系性、普遍性、再現性、客観性、妥当性、予測性、公共性、歴史性、応用性の10の条件それぞれについて五段階評価を行い、それらの総計として各トピックの科学性評価をし、その結果を次の四段階で表示しています。

1) 科学
これら10個の諸条件の評価が全体にわたって高い、もしくは部分的に低評価であっても他の高評価の条件によってそれを埋め合わせられる。将来にわたって科学と評定できる。

2) 発展途上の科学
諸条件の評価が全体的に高いとは言えないが、部分的には高評価。暫定的に科学とみなすことができる。

3) 未科学
諸条件の評価は全体的に低いが、部分的には高評価もある。現段階では科学とは言えないが、今後の研究いかんで科学と言える段階に進む可能性はある。

4) 疑似科学
諸条件の評価は全体にわたって極めて低い。科学的な言説を持っているにもかかわらず、実際のところ科学とは言えない。
 
この四つの分類が妥当なものなのかについても議論の余地があるでしょうね(私は今のところ妥当と思っています)。

ご自身の研究分野、それは科学?

石川自身の専門は超心理学。
 
テレパシー、透視、念力といった、いわゆる超常現象にカテゴライズされる現象を対象に科学研究する分野です。
 
明らかに物理学研究のメインストリームからは逸脱しているのですが、石川自身はどう評定しているのか?
 
彼はこれを、三番目の未科学に分類しています。

正直ですね。
 
もしこれを「科学」に分類しようものなら、あまりにも手前みそというか不誠実感は免れないでしょうね。

でもなんで? 

彼はその理由として、超心理現象自体の存在は認めつつも、それを説明し得る理論が存在しない、皆目わからないという点を挙げています。

超心理学には、よって立つ「理論」がない

超心理学の研究というのは、現状では実験室での実験や社会実験を通じた、念力や透視現象の存在の確認作業がほぼすべて。
 
日本ではなかなか予算がつく代物ではありません、残念ながら。
 
そしてそれらの評価も専門家の間でまちまち。
 
石川は現象そのものは存在すると主張していますが、現段階でそのように社会的コンセンサスが得られているわけではありません。
 
そして理論研究はというと、これはもうごく少数の論文がでているだけですね。
 
提案されている物理モデルもまた、確かめられたと称する現象のごく一部を説明できる可能性がある、に過ぎない。
 
この現状から見ると、石川の超心理学が未科学の段階にあるという評定は、個人的にはやはり妥当と言えると思います。
 
少なくとも、曲がりなりにも科学的アプローチがなされているという点で、疑似科学ではないでしょう。
 
理論研究について言えば、私の提唱するPF理論は、既存の超心理学の理論研究の中では普遍性、つまり超心理現象一般に適用できるという点で一日の長があると思っています。

ひょっとしたら将来、超心理学を下支えする理論として確固とした地位を築き、超心理学を科学の域へと昇華させるカンフル剤になるかも知れません。
 
(※)「なぜ疑似科学が社会を動かすのか」、(株)PHP研究所、2016年

#探究学習がすき

○新刊 脳は心を創らない ー左脳で理解する「あの世」ー
(つむぎ書房、2023年)
心の源は脳にあらずとする心身二元論と唯物論を統合する新説、「PF理論」のやさしい解説。テレパシーやミクロ念力などの超心理現象も物理学の範疇に。実証性を重視し、科学思考とは何か、その重要性をトコトン追求しつつ超心理現象に挑む、未だかつてない試み。「波動を整えれば病気は治る。」こんな「量子力学」に納得しちゃう人、この本を読んだ方が良いかも!?あなたの時間・お金・命を奪うエセ科学の魔の手から自分を救うクリティカルシンキング七ヶ条。本書により科学力も鍛えられちゃう。(概要より)

○ Youtubeチャンネル「見えない世界の科学研究会」
身近な科学ネタを優しく紐解く‥
ネコ動画ほど癒されずEテレほど勉強にもならない「お茶菓子動画」


この記事が参加している募集

探究学習がすき

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?