ブレるという美徳

パーキンソン病の治療薬の一つにCOMT（コムト）阻害剤というのがあります。

COMTはある種のドパミンを代謝する酵素で、この活性を阻害して脳内のドパミンを増やすことで、治療効果が得られます。

米ブラウン大学・フランク博士は、このCOMT遺伝子が、どの程度自分の意見を押し通すのか、逆に人の意見に流されるのかという性格の差異に影響しているとする研究結果を発表しました。

遺伝子は一般にタンパク質を作るという重要な役割を果たしますが、COMTには、本来とは異なる種類のたんぱく質を作る変異型COMTが一定数含まれることが分かりました。

そして、遺伝によりこの変異型COMTを受け継いだ人は、他人の意見に流されやすい傾向があることが分かったのです。

この変異型COMTを持つ人は人類の中で57％もいます。

人類の生存に不利なだけの遺伝子は、3％が上限と言われます。

逆に言えばそれ以上の割合の人が持つ遺伝子には、たとえそれが人類にとって「病気」と認識されるようなものであっても、人類生存に対する意義としてのその存在理由が必ずあると考えられます。

この意味で、もし他人の意見に流されることが人類の生存に100％良くないことだとすれば、57％という変異型COMTの比率はあり得ません。

つまり、他人の意見に流されるという特質が、人類生存に役立っている可能性が高い、ということです。

宣伝文句として「私はブレない」ことを強調する政治家はいます。

政治家の政策やポリシーがブレまくりでは困るわけですが、一般論として、生きていく中であまりにもかたくなに初志貫徹にこだわるのは得策ではないのかも知れません。

状況の変化に応じて、場合によって目標を変えるというのは必ずしも、「夢をあきらめる」というようにネガティブに捉える必要はないのです。

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