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効率化にマッタをかける前頭前野

大洪水から人間と動物が絶滅を免れる、旧約聖書に出てくる物語に関する次の問いに答えてみてください

「動物を各種何匹ずつ連れて、モーセは方舟(はこふね)に乗ったでしょうか?」


過去に行われた調査では、多くの人が2匹と答えました。

しかし正解は「0匹」です。


方舟の物語で船を作って自分とその家族、動物たちを救ったのはモーセではなくノア。

言わずと知れた「ノアの方舟」ですね。

モーセはヘブライ人を率いてエジプトを脱出した、同じく旧約聖書に出てくる聖人ですが、ここでは関係ありません。

ですが「動物を何匹ずつ連れて」や「方舟」という断片から問い全体のストーリーを把握し(予想し)、多くの人が早まった答えをしてしまいます。


しかしこのような早合点は、決して脳の異常ではありません。

見慣れたパターンから全体を予期し思考の効率を最大化する、自動化された脳動作の仕様であり、たいていの場合はこれでうまくいきます。


だが場合によっては、この方舟の例にあるように認知の習慣を逸脱し歪曲を識別する意識的動作が必要になる場合もあります。


fMRIによる診断では、正しい文章、そして明らかに誤った文章を読んでいる時は、活発に動いている脳の領域に差異はありません。

また、この方舟文章のような歪曲された文章に対しても、その歪曲に気付かず「2匹」と答えている状況でもやはり、脳の活動に変化はありませんでした。

しかし「ん?」とその歪曲に気付き、まともに2匹と答えてはいけないことに気付いた時だけ、前頭前野が活発に働くことが分かりました。


時にはこのように、無意識の先読みを意識的に遮断し、高度な認知力を持つ前頭前野を働かせた知覚の処理も必要です。


断片的な知覚を、経験や思い込み、願望などでつなぎ合わせて全体像を作り上げる認知作用、いわゆる「トップダウン処理」によって幽霊の目撃談等、事実と異なる体験談が形成される可能性があります。

そのことを認識した上で、自分や他人の体験談を咀嚼する姿勢が、より誤りの少ない自然認識には不可欠なのではないでしょうか。

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