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30年越しのテレパシー実験

有名なテレパシー実験に「ガンツフェルト実験」というのがあります。
 
ガンツフェルト(“Ganzfeld”)はドイツ語で「全視野」を意味し、視野全体が一様化している状態を指します。
 
まず、被験者(テレパシー受信者)の両目にピンポン玉を半分に切ったものを貼り付ける。

ピンポンの半球で目を覆う

すでに異様な風体ですが、視野を覆うわけですね。
 
その上で赤い光を当てる。

すると視野全体が赤くなる。
 
なぜこのようなことをするのか?

それは視覚情報を失わせるため。

視覚の刺激を無くすなら部屋を真っ暗闇にすればよいではないか?

そうとも思えるのですが、実はそうでもない。

人の視覚は刺激を失うと感度が激上がり。

本当に刺激を失うと、逆に刺激を生んでしまうのです。

何も見ていないはずなのに、色んなパターンが見えてきてしまう。

これは簡単に実験できます。

なので敢えて、全視野に一様な赤い色の光を見せた状態にします。

こうして一様で変化のない刺激を与えておくことで、意識はありつつも視覚機能が著しく低下した状態を作ることができるのです。

聴覚も同様で、完全無音とするのではなく、一定のホワイトノイズかピンクノイズをヘッドホンで聞かせておきます。

こうして視覚と聴覚を外部と遮断したこの状態では内的経験だけが起こり、夢を見ているような状態になると言います(ただし寝ているわけではない)。

今テレパシーの送り手役は別室にいて、ランダムに選ばれたターゲットイメージを被験者に送ります。

どうやってテレパシーを「送る」のかなんて私にもよくわかりませんが、選ばれたイメージを見てそのイメージを心の中で強く念じる、とかですかね。

(人間の送り手がいなくとも、別室内の画面にイメージをランダム表示させるだけで受け手はそのイメージを受け取ることができ、その効果の効率は送り手役の人間がいる場合と大差ない、という実験結果もあります)。

この状態で被験者は、心に浮かぶイメージを逐一、発話で報告します。

その内容は録音もしくは第三者による手書きのメモにより記録されます。

30分の作業の後、答え合わせをします。

被験者に四つの絵を提示し、心に現れたイメージに最も近い絵を選択。
 
それが送り手に提示されていたターゲットイメージであれば成功。

結果はと言えば、30年間で3145回行われた実験で1008回成功。

成功率32%で偶然に成功する確率25%に対し有意に大きい結果となった、とは超心理学者の明治大学・石川幹人の弁。

これに対し超心理学に批判的な心理学者R・ハイマンは、1)送信するイメージ選択時のランダム性の不備、2)テレパシー以外の通常手段での情報漏洩の可能性、3)統計上の問題など様々な問題点を指摘し、これら一連の実験がテレパシーの存在を示す証拠にはならない、と主張します。

ハイマン以外にも多くの追試・メタ解析が行われ、支持する者、不支持とする者が現れ、現在も論争は続いています。
 
科学コミュニティはもちろん社会全体としてももちろん否定派が多いのですが、どうなんでしょうね?

私も予算があれば、過去の結果を踏まえ、徹底的に疑義を報じる要因を洗い出し、より洗練された方法を考案して追試してみたいものです。

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