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因果関係を読み誤らない統計の活用を

虫の知らせやデジャヴ、幽霊目撃といった不思議現象の体験‥

そのようなことが実際にあると、印象があまりに強いため不思議現象を信じ込んでしまうのも無理ないのかも知れません。

また、人に話したくも人情というもの。

そのような自己の体験や他者の体験談を冷静に判断し、他の要因(誤認、フェイク、心理作用等々)の可能性がないかどうかを探る一つの有力な方策として「統計」があります。

このことは当ブログでも何度か指摘してきました(例えば「社会不安が広がる時こそ不確実情報に注意」など)。

統計を取ることの有効性は間違ありません。
ですが、ここでは逆にそれを扱う上で注意しなければならない事項を考えたいと思います。

それは「相関」と「因果」の違い。

人は「たまたま」を許さない

統計が、物事の因果関係、つまりあるサプリを飲んで実際にそれが効くか効かないか、というような原因と結果の関係を推し測る有効な手段であることは間違いありません。
しかし現実には、統計から読み取れる情報に一定の任意性がある場合があるという点に注意を向ける必要があります。

任意性があるということは、統計データを恣意的に用いる余地がある、ということです。

Aの増大と共にBも増大するという関係がある時、AとBの間に相関があるとは言えます。

しかし両者の間に因果関係、つまりどちらかがどちらかの原因になっているとは必ずしも言えません。

こう書くと当たり前のようですが、人間は得てしてそこに因果を見出してしまう。これは生物の機能としてそなわった人間の性(さが)です。

人間は何かの事象が生起した理由を知りたいと思うようにできている。
「たまたま」で片づけたがらないように進化してきたのです(「なぜ占星術を信じるのか?」)。

そしてここに悪徳商法がつけ込んでくる。

例えば、歳を重ねれば多くの人が悩む腰痛。
これに本来全く関係のない「要因」を結びつけて宣伝し、「それが原因か!」と強い印象を持たせてサプリを売りつける、などなど。

だから注意が必要なのです。

公的機関の統計にも注意

国立がん研究センターが公開されているデータによれば、我が国においてがんによる死亡者数はここ60年くらい、一貫して増大しています(図1)。

図1 国立がん研究センターがん情報サービス、「がん統計」(厚生労働省人口動態統計)

この日本社会でいったい何が起こっているのか??

具体的なデータを見せられれば、不安になりますよね。

ある人は水道水の質の悪化と言い、またある人は大気汚染と言うかもしれません。

ケムトレイル的な陰謀論を唱える人もいるのかも。

こんな「科学的なデータ」を根拠にそのようなこと言われたら、
水道水の悪化と言われれば高額な浄水器に、
また大気汚染と言われれば空気清浄機に手を出してしまうかも。

陰謀論を唱えられ何らかの宗教団体や自己啓発団体に勧誘されれば、不安感も相まって入会してしまうかもしれませんね。

では実際には何が起こっているというのでしょうか?
がん死亡率の単調増加の背後には何があるのか?

もうお分かりかも知れませんが、がんの発生率を左右する重要なファクターと言えば「年齢」ですよね。

高齢化するほどがんの発症率は高まります。

ある基準となる年を決め、年齢構成比がその年と一致するようにその他の年次のデータを調整してみると(「年齢調整」)、がんの死亡率はむしろこの60年でほぼ単調「減少」していることが分かります(図2)。

図2 年齢調整後の同データ

このデータを見て「浄水器買わなきゃ!!」とはなりませんよね。

統計を見る際には原因と結果の見極めを

平均寿命の延びや主たる死因に自殺がランクインしている現状を考えると、医療技術や生活環境の向上、そして他の病気による死亡が減った中で、治療の面からは厄介ながんが残った、とも言えます。

短絡的に因果を見誤ってしまうと思わぬミスリードの憂き目にあう可能性がある。

統計データを見る時はそのようなことにも注意を払いたいものです。

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