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本当にあるの?ESP(超感覚的知覚)

超心理学の祖と言われる、米デューク大学・J・ライン教授。

超心理学とは、今のところ物理学的に解明されないメカニズムによる、心どうし、もしくは心とモノの相互作用を研究する心理学の分野。

ラインはそれまで盛んにおこなわれていた、霊媒師を用いた交霊実験などの心霊研究を見直し。

一般の人を被験者として透視などの実験を行う、よりオープンな研究分野としての超心理学を確立しました。

その後設立された超心理学協会は、1969年にアメリカの科学振興協会に学術団体として認定されています。

学問として、科学としての体裁を整えようとしてきた超心理学。

一方、超心理学の日本における第一人者・石川幹人は、

超心理学は科学的な方法に則って研究が進められているという点で科学だが、確固たる理論がない段階にあるという点で、将来科学になる可能性のある未科学の段階にある、と言える。

「なぜ疑似科学が社会を動かくのか」、石川幹人、PHP研究所(2020)

と言います。

ならそれが「科学化」できる見込みはどのくらいあるのでしょう?

足を引っ張るESP実験

テレパシーや透視などは、感覚器官を経ない知覚作用として「超感覚的知覚(ESP)」と呼ばれます。

ESPと言えば「ESPカード」。

ESPカード

ラインさんのことは知らなくても、ESPカードを知っている人は多いのでは?

ふた昔前はよくTV番組(その多くはバラエティ)内で実験の実演が放映されていました。

円、正方形、十字、星型、波形の五種類の絵柄の書かれたカード(ESPカード)を利用した、テレパシー、透視、予言に関する実験ですね。

勿論我々が目にしたTV番組のレベルでは見世物的要素が大。

しかしラインが同僚の心理学者・ゼナーの考案したこのカードを使った目的は、飽くまでまじめな超心理学実験としてでした、当然ながら。

一方ラインさんが始めたころの原初的なESP実験では、カードの模様が実験者のメガネに映る、角膜に映る、カードが変形する、裏面に傷がつく等、実験結果の統計に影響を与えうる要因がいくつも指摘されました。

そのためラインさん本人は自信をもって透視やテレパシーの実在を主張したにもかかわらず、世間での受け止め方はかなり冷ややかだったようです。

厳密性を求めて

他人のフィルターを通すのってやっぱ大事ですね、客観性を担保するためには。

確かに、昨今のプロマジシャンたちの驚愕的なカードマジックを見るにつけ、わずか五つの図形パターンを当てるというだけの実演のみで、現代物理学の域を越えるような何らかの作用を主張するのはムリ筋と言えるでしょう。

しかし時は進み現代では、このESP実験自体も進歩して精度が向上しているようです。

コンピュータ化されESP実験の厳密性は増している、と石川は主張します。

石川によれば、米D・ラディンは部屋を別にした厳密なテレパシー実験を3145回実施し、そのすべてを発表することでお蔵入りがないことを示しました。

※)「お蔵入り」:テレパシーの効果を示したい実験者にとって不都合な、テレパシーの効果が見られない実験を公表せず、効果があるかのような結果が得られた実験のみを発表することで超心理現象に肯定的なデータの率を増やす人為操作。

その上で、わずかではあるがテレパシーの効果を示す統計的に有意な結果が得られた、とします。

こういう超心理現象の実験で石川はよくラディンを引き合いに出しますが、私などが疑問に思うのは、「他に研究者いないの?」

テレパシーのような超心理現象があるはずだ、もしくはあって欲しいと思っている人が実験をすると、たとえお蔵入りがなかったり、実験の設計そのものが科学的妥当性の高いものだったとしても、実験者に心理的バイアスがかかることは大いに考えられます。

そして被験者の側にも、実験者(ラディン)の期待に応えたいという同一方向のバイアスが働くことは十分に考えられる。

こういったバイアスが、実験結果に何らかの影響を及ぼさない保証はない。

やはりほかの多くの研究分野同様、多くの研究グループが参入して独立の実験を行いつつ互いに追試(同じ条件で同じ結果が得られるかどうか確かめる実験)し合うような関係がこの分野でも必要でしょう。

そうでないと、超心理現象の存在が今以上に認知されるのは難しいでしょう。

超心理学の科学化へ向けて

改めて、仮にESP実験やラディンの超心理実験などの結果が妥当で、現代物理学では捉えきれない超感覚的知覚現象が存在することが示されている、と仮定しましょう。

現段階ではとてつもない仮定ではありますが。

ここで示されている、超感覚的とされる知覚。

超感覚的の原語は”Extra-sensory”、感覚器官を通さないという意味。

もし実験結果が正しいとするとその知覚情報の伝達は、実験内容から言って網膜や蝸牛、味蕾など既知の感覚受容器を経ているとは思えない。

ここが石川をして「超心理学が未だ科学たりえないのはそのメカニズムを支える理論がないからであり、科学となるためには革新的な物理理論が必要」と言わしめる所以です。

私の提唱するPF理論は、超心理現象を説明できる検証可能な仮説としての体裁を整えていると、個人的には思っています。

やはりまずは超心理現象、その存在の可否が実験的に広く認知されることでしょう。

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