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最近パラリアでは、生徒がそれぞれ英語や現代文・古文などをどういう風に読んでいるかを確認しつつ、修正していくため、毎週問題を渡して、解いてきた人に個別で解説・確認をしています。ゼミというには余りにささやかなものですので、表題は大仰ですが、今回古文を扱ったので、その報告を載せます。今回は、漢文を扱いました。1970年代の東大の問題です(教学社の『東大の古典』に収録されています)。


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本文の量は短めで、問題も訳中心の構成だったので、形式面ではやりやすかったと思います。ただ、内容としては説話調ではなく理論的なものでしたので、やりづらかったかもしれません。

(今回は知っていてもあまり意味はなさそうですが)著者の伊藤仁斎は日本史でも出てくるので、先入見が上手く使いこなせるかもポイントになります。逆に、仁斎のイメージを掴むというのも、この問題をやる目的の一つです。

解答を見たところ、書き下しはできても、文意を把握できていなかったり、文脈から外れてしまったりしいるものが散見されました。今回は理論的な文章だったので、論理を追うことを特に注意する必要がありましたが、なんとなく読んでしまったような印象があります。


以下、ポイントをまとめます。

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【読解のポイント】


① 漢文は対句を特に意識する
漢文では、対句表現が用いられることが多いです。対句表現は、漢詩はもちろん、散文でもよく出てきます。例えば杜甫の『春望』が典型的です。冒頭を記します。

国破山河在     国破れて山河在り
城春草木深     城春にして草木深し
感時花濺涙     時に感じては花にも涙を濺ぎ
恨別鳥驚心     別れを恨んでは鳥にも心を驚かす

このように、1行目と2行目、3行目と4行目の構造が全く同じです。今回扱った文章でも、冒頭から対句が並んでいました。こうした表現技法に着目すれば、仮令1箇所わからないところがあったとしても、もう片方がわかれば、「ここは逆の意味だからこういうことだろう」「ここは同じ意味が並んでるから、大体こういうことを言っているんだろう」と、おおよその意味がわかるようになります。また。傍線部が白文になっている問題はよくありますが、そういう時でも書き下しの仕方がわかります。

② 喩えと主張の対応をはっきりさせる
現代文でも例が出されることは少なくないですが、特に漢文では、物語を通じて主張を補強することが多いです。例えば論語から引用する場合、ただ単にエピソードを紹介しているわけではなく、「孔子がこういうことを言っている(やっている)から、こうすべき」という主張をしていることになります。

まず、喩えの箇所がどこからどこまでかをはっきりさせる必要があります。突然固有名詞が出てきたり、今までなかった細かい続柄(兄とか父とか)が出てきたりしたら、例え話が始まっているのではないかと疑った方がいいです。

次に、筆者の主張と喩えがどう対応しているかを考えてください。今回扱った文章では、出来の悪い弟に厳しい兄の話が出てきましたが、これは、「厳しく接してしまっては、むしろ欠点を助長してしまう」ということの喩えとなっています。話だけ見ていると、「この話の弟のように、厳しくされても拗ねてはいけない」という喩えにもなりそうな気がしますが、それは筆者の意図ではありません。ここでは、兄のようにしてはダメで、愛を以って接しなければならないという主張につながります。


以上になります。今回もご覧いただき、ありがとうございました。


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