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急激に親密になる技術

この間こんな記事を書いた。

上記の記事ではカウンセリングや臨床心理学の知識に基づいた、「人との距離を縮め、信頼関係を築く」ための手法について触れた。「関心の共有」、「共感」、「肯定的評価」などについて理論の紹介や例文とともに説明した。

この記事で紹介した方法というのはある種「王道」的な方法であり、一定時間はかかるものの失敗する可能性は低く、どのようなタイプを想定しても関係が破綻するような可能性の少ない「汎用性」の高い手法である。

一方で「誰かと親密」になることを目標とするのであれば、諸刃の剣ではあるがうまくいけば効果抜群の手法もある。「王道」というよりも「飛び道具」的なその手法は、「燃えるような恋愛」であったり「急激に盛り上がる関係」においては出現頻度が多いものである。

そんな「諸刃の剣」である手法を今回は紹介してみたいと思う。

演技性パーソナリティ障害とは

今回紹介する「急激に親密になる技術」は演技性パーソナリティ障害や演技性が強い人に見られるような手法である。

演技性パーソナリティ障害は過度に他人に注目されることを求めたり、異性に対して誘惑するような態度をとるような傾向のある人格障害である。
演技性パーソナリティ障害の診断項目は次のようなものである。

演技性パーソナリティ障害の診断項目
・自分が注目の的でないと楽しくない。そのために話を作り出したり、騒動を起こすこともある。
・不適切なほどの誘惑的、挑発的な性的な行動があり場面を選ばない。
・感情の表出がすばやく変化しそれは浅薄である。
・注目をひこうと身体的な外観を用いる。
・印象的だが中身のない話し方をする。
・他の人から見ると芝居がかったような演劇的な表現を行う。
・被暗示性があり、その場面や流行に影響されやすい。
・他者を実際以上に親密とみなし、知人をかけがえのない親友のように言ったり、会っただけの人を下の名前で呼んだりする。
<Wikipediaより引用>

これらの基準を五項目以上満たした上で、臨床的に著しい苦痛や機能の障害をもたらしていると精神科医に判断されると「演技性パーソナリティ障害」と診断される。

実際「演技性パーソナリティ障害」と診断される人は少数であるが、演技性が強く他人と短時間で親密な関係を築くことが得意な人というのはそこそこの割合で存在するであろう。
今回はそんな演技性の強い人が「急激に親密」になる時にどのような手法を用いているのかを紹介していこうと思う。

注意すべき点

冒頭でこの手法は「諸刃の剣」であるという風に述べたように、相手のタイプや状況などを選ぶ手法であることをここで断っておきたい。
そもそも相手が急激に親密になることを避けたいと考えている人や、適さない状況でこの手法を使ってしまった場合、関係が破綻してしまったりあなたが糾弾されてしまうような可能性がある。

例えば回避性の強い人に対して今回紹介する手法を多用した場合、あなたは警戒の対象となりむしろ距離感や溝が深まってしまう可能性がある。
またあなたが上司で異性の部下にこの技術を用いるとセクハラで問題になってしまうかもしれない。
ぜひ、相手と状況を選んで用いてもらえればと思う。

非言語的アプローチ

言語的に「どんな発言をするか」という部分も大切であるが、それ以上に「どのように振る舞っているか」という非言語的な部分も相手に印象を決定づける大きな要因である。

今回の非言語的なアプローチで意識するべきポイントは次の四点である。

非言語的なアプローチのポイント
・アイコンタクト
・ボディタッチ
・表情
・ボディランゲージ

アイコンタクト
アイコンタクトは単純に考えれば「目が合っているだけ」の状態であるが、極めて重要な意味を持つ。
見つめあうことによってスキンシップを行ったときのように、愛着ホルモンであるオキシトシンが分泌し、親密さや好感を勝ち取ることができる。
相手の目を見ている時相手も目を合わせてくれる様であれば、スキンシップをとっているような効果が生まれるのである。

演技性パーソナリティの人はこのような効果を感覚的に認識しており、じっと見つめたりウィンクすることで相手の心をこちらに向かせることに長けている。

ボディタッチ
ボディタッチはアイコンタクト以上にに強力な武器である。
もちろん、欧米圏のように挨拶替わりにハグやキスをする文化がない日本では、もう少し控えめなボディタッチを日常の動きの中に自然に取り入れるスキルが必要である。

ツッコミや激励をする時に肩をポンと叩いてみたり、ネイルや指輪に興味を持ってみたり、手相を見てみたりすることである程度自然にボディタッチをすることも可能である。
ビジネスの場などでは意識的に握手しておくだけでも、親密になることを助けてくれるだろう。

ただ、回避性のパーソナリティの人にこのようなことを強引にやってしまうと不快感や恐怖感を与えてしまうことや、立場によってはセクハラに当たってしまう可能性があることには留意しておきたい。

希少性のある自己開示

演技性パーソナリティの人は誰かの心を揺さぶるような話をすることに非常に長けている。
その一つの手法が一般的には人に言いづらいだろうと思われることや、悲しい過去などを打ち明けることで同情を誘い親密になるのだ。
普通なにか悲しい過去や苦しかった経験を打ち明けられると、自分だけに自己開示してもらえた気持ちになり、味方になってあげたくなるものである。

カウンセリングにおいて「逆転移」という言葉がある。

逆転移
カウンセラーがクライアントに対して抱いてしまう無意識の心の動き。
無意識に「この人を守りたい、甘えてもらいたい」という気持ちを抱いてしまい、恋愛関係や性的関係に発展してしまう可能性があるため、カウンセリングにおいては意識して注意すべき感情の動きとされる。

逆転移はカウンセリングにおいては治療の妨げとなるため、避けるべきものだとされているが、一般的にな人間関係ではこれを応用して親密さを手に入れることができる。
一般的な恋愛指南書などに「相談を聞くべき!」みたいな文言をよく目にするが、「相談や苦しみを聞いてもらう」こともまた効果的なのである。
恐らく「相談してもらう」よりも「相談に乗ってもらう」ほうが容易であろう。

・仕事で辛かった経験
・浮気されて失恋した過去
・いじめられた過去
・うまくいっていなかった家庭環境

などについて、「○○さん信用しているから話すとけど」といった風に打ち明けられたり、相談されたりすると無意識に親密になってしまうものである。

誇張と矮小化

演技性パーソナリティの人は事実よりも「相手の感情を動かすことができるか」という点を重要視し、そのためであれば嘘をつくことも厭わないようなタイプの人が多い。
しかし、嘘をつくということは演技性パーソナリティでないような人にとって罪悪感を感じることも多く、バレた時のリスクも考えるとそっくりそのまま演技性パーソナリティの人の真似をするのは得策をは言えないだろう。

そこで少し話を膨らましたり、都合の悪い部分を省いて話すということで相手の気を引くというのはどうだろうか。
少しうれしかった誉め言葉やプレゼントに対して大げさに喜んでみたり、少し辛かった経験をとても辛かったかのように語るのである。

罪悪感を感じない範疇で相手が喜ぶような反応をしたり、思わせぶりな態度をとることは誰かと親密になることを促進してくれることだろう。

過度な賞賛や好意の表明

演技性パーソナリティの人は相手の承認欲求や自己愛をくすぐることにも非常に長けている。
普通の人があまり口にしないくらいの賞賛や好意を口にすることで、相手の承認欲求自己愛を満たして喜ばせることができる。
人々が演技であるとわかっていてもドラマや映画を見て感動するように、「大げさでしょ」「またまた、、」なんて言葉を口にするものの、嘘でも賞賛されたり好感を伝えられたりするのはうれしいものである。

少し大げさなくらい褒めたり好意をほのめかしたりすることで、「この人は自分にだけこのような態度を取っている」と認識してもらえればこちらのものである。

もちろんシンプルに

「○○ちゃん大好き!」
「すっごい綺麗だね!」

といった風にシンプルに好感を伝えたり、褒めたりすることも効果的ではある。

しかし、なかなか伝えるのが難しかったり露骨な感じが恥ずかしい部分もあると思うので少しひねった方法をいくつか紹介したいと思う。
また、恋愛なんかでは主導権を握るためにも好意は曖昧に表現しておいた方がよい場合が多い。

希少性
「○○ちゃんだから話すけどさ。」
「もー○○さんだから特別にですよ(笑)」
自己開示の部分でも触れたようにこのように希少性を示しながら話すと、相手が自分にとって特別な存在で信用しているというメッセージを与えることができる。
すると返報性の効果で相手もあなたにとって好感を持ってくれる。
過大表現
「四六時中ずっと考えているくらい○○のこと好きだよ」
「○○さんめっちゃ綺麗ですよね、ずっとモデルだと思ってました。」
こんな感じでありえないくらい過大に好感を伝えたりすると、相手は悪い気がしない上に場が和んで話しやすくなる。
「ありえないでしょ!(笑)」と嬉しそうに言ってもらえればしめたものである。
間接表現
「○○といると楽しくて時間を忘れちゃうな。」
「○○さんならめっちゃ安心して任せられますね!」
直接的に褒めたり好感を伝えるのではなく、何か感想などを言ったら結果的に褒めてしまうといった状況を演出するのも効果的である。
直接的な表現よりも相手に発言の意図や意味を考えてもらうことができ、結果的に相手の心をくすぐることができる。
小ネタ
「黒髪ロングで、色白で、シンプルなピアスと水色のワンピースが似合う人!(相手の特徴)」
興味のある異性と恋愛の話題になったときなんかに使ってみると、結構喜びながら笑ってくれる小ネタである。
気が向いたら使ってみてほしい。

まとめ

今回は誰かと短期間で親密になりたいときに効果を発揮する「飛び道具的な」テクニックを紹介した。
なかなか意中の人と進展がない人や仕事相手と距離感を感じるような人は紹介した手法をいくつか使ってみることで、親密になることができるのではないかと思う。

今回の技術の基本的な原則は「自分自身が相手を警戒していないように振る舞うこと」「相手と親密になれることに自信があること」に従っている。
つまり相手に心を開いてもらい親密になるには、こちらが心開いている(あるいは開いているように振る舞う)ことがとても重要なのである。

もしも、細かいテクニックを覚えていなくても「自分が心を開いているように振る舞う」ということを意識していれば、いままでよりも人と親密になることは容易になるのではないかと思う。


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