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ベランダに出よう

家の食器棚から細いストローを持ち出して、ハサミで切れ込みを入れ花の形にひろげる。食器用洗剤を紙コップにチューと注いで、少量の水で割る。薄めすぎないよう、配合に気を使いながら慎重にやる。ストローの先を紙コップの液体にしずめて静かに息を吹き入れると、小さなシャボン玉達がぶわぶわ生れ出て来る。


7階のベランダから吹き降ろすと、下を通りがかる人達に魔法をかけているようでとても気持ちが良かった。
強い風に吹かれて、シャボン玉が空の彼方へ消えてゆくのを見守りつつも、次のシャボン玉の作業へ取り掛かる。
魔法をかけるのが仕事であるかのように、コップが空になるまで黙々と吹き続けた。
ベランダに点々と泡の跡を残して、私は部屋へと駆け戻る。

今日は土曜日。吉本新喜劇の時間だ。

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