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価格政策

欧米のチェーンストアでは、価格の競争手段は、ESLP(エブリデイ・セイム・ロー・プライス)が常識となっています。
ESLPとは、あらゆる部門の売れ筋商品が、「いつも安い」とお客様に印象づける価格政策のことです。「安い」販売価格とは、市場価格よりも3割以上安いことが目安となります。

作業服のワークマンさんは、ESLPです。
値下や短期特売(バーゲンセール)をほとんどしません。いつも同じ価格で、元々価格が安いので、お客様は値札を見ずに、安心してお買い物ができます。作業服ではシェアがナンバーワンであること、そしてオリジナル商品を開発しているので、他社と価格競争しなくて済むことが、ESLP可能な要因です。
そして同社の新業態で人気の「ワークマン女子」。アパレル業界では、値下やバーゲンは当たり前なので、さすがに値下しないと無理なのでは?と思っていたら、同社は、アパレル業界ではなく、アウトドア業界への参入と捉えているようで、こちらもESLPを貫く方針のようです。もちろん、オリジナル商品は、デザイン性や機能性に優れ、アウトドアブランドと比べたら各段に安い価格設定なので、納得です。さすがです。

一方、我々、靴業界では、値下競争ばっかりしています。
コロナ禍での外出自粛が、靴業界を苦しめました。
旅行、式典、パーティはダメ、出勤は極力しないで在宅ワーク、子供の運動会や修学旅行も縮小、友人との外食もできない、これでは、靴がほとんど必要ありません・・・。靴業界各社、売上不振で、在庫を余らせているため、値下をして消化させようと必死です。
ライバル店と同じ商品の扱いが多いので、相手が価格を下げたら、我が社も同じ商品を値下げせざるを得ないのです。
さらに、オリジナルブランドだけを扱う人気の靴店でさえ、常に何かしらのセールを開催しています。オリジナル商品の元々の価格設定が高いので、セール価格が通常価格のようなものなのに、安さを演出しています。
我が社は元々の価格設定が低いので、マネして同じようなセールをすると確実に赤字になってしまうのですが、同じショッピングモールだと、やらざるを得ないのです・・・。
同業者を見過ぎて、同質競合に陥って、自分で自分の首を絞めている、と分かっているのですが、なかなか抜け出せません。
販売促進=値下だけ、というのはあまりにも安易です。

企業はライバルとの競争が激しいほど、自身を進化させることを怠らないので、結果として生き延びやすくなる。
あまりにも激しい競争にさらされ過ぎると、競争そのものが目的化してしまい、競合相手だけをベンチマークするようになる。その結果、競争環境で生存できる力を失ってしまう。

我が社は、自身を進化させて、不毛な価格競争から抜け出さなくては、生存できなくなってしまいます。
ハイ&ロー(値下したり、特売期間終了後に値上げしたりすること)は、店舗の作業に手間がかかります。また、一部のお客様だけが得をして不公平なので、お客様の信頼を失ってしまう可能性があります。通常の価格で買ったのに、その数日後に値下がりして、ガッカリしたこと、ありますよね・・・。

やはり、ESLPを早急に目指さなくてはなりません。
それには、徹底的にアイテムを絞り込みつつ、サイズや色の分布を考え、販売ピークを見極めながら、在庫管理や発注管理をする必要があります。
同時に、商品開発、ブランディングも肝です。

分かってるんですけどね、これがなかなか牛歩なのです。
ひとまず、コロナが落ち着いてきて、売上が少しずつ回復してきているので、かなり他力ではありますが、ライバル各社の在庫が適正になり、値下やセールをしないでほしいと願うばかりです(^_^;)。

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