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『雇い止め』って何?景気悪化に備えて対処法を学ぶ

新型コロナウイルスの影響で、経済活動が停止している。
多くの国が陸路・空路ともに入国禁止を表明しており、さながら世界全体が鎖国状態。
未だに解決の糸口が見えないが、おそらく本番はこれからで6~7月がピークとなるだろう。

残念ながら、出社すると人事部や上司に呼ばれ、急に契約終了を言い渡される、、、そんな人も増えてしまうだろう。

そんな時に泣き寝入りせずにしっかりと対処法を理解した上で、交渉しなければ損をしてしまう。
今回は、『雇い止め』になった時の対処方法をいくつか紹介しておきたい。

1.『解雇』と『雇い止め』の違い

まず多くの方が『解雇』と『雇い止め』を混同してしまいがちだが、全く別物ということを理解しておきたい。

『解雇』とは、契約期間中に従業員の同意なく、使用者(会社)側からの一方的な通知により雇用契約を終了させること。

『雇い止め』とは、期間の定めのある雇用契約(有期契約)において、雇用期間が満了したときに使用者が契約を更新せずに、労働者を辞めさせること。

2.『解雇予告』とは?

労働基準法では、使用者(会社)が労働者(従業員)を解雇しようとする場合、少なくとも解雇する日の30日前に解雇の予告をしなければならないと規定されており、この予告が『解雇予告』です(労働基準法第20条)。

一般的には無期契約の正社員を指しますが、派遣社員含む有期契約社員であったとしても解雇予告が必要になる場合があります。

厚生労働省はパート社員、派遣社員、契約社員含めた有期契約労働者に不利益がないように、契約締結や更新及び雇い止めに関する基準を設けています。

■『解雇予告』に該当する場合の一般的な判断基準

【1】契約更新の回数が3回以上である

【2】雇用の通算期間が1年以上である

【3】業務内容が臨時的ではなく恒常的である

【4】更新手続きが厳格ではなく、自動更新になっている

【5】契約更新を期待させる言動がある

あくまでもケースバイケースなので一概には言えませんが、特に【1】と【2】が満たされている場合、『解雇予告』が必要と判断される可能性が高くなります。

3.『解雇予告手当』とは?

労働者(従業員)を解雇する場合の『解雇予告』は使用者(会社)側の義務であり、もし使用者(会社)側が労働者(従業員)を解雇する30日前にこの『解雇予告』をしない場合には、使用者(会社)は解雇する労働者(従業員)に対して30日分以上の平均賃金を支払わなければいけない(労働基準法第20条)。

このときに使用者(会社)が支払う30日分以上の平均賃金のことが『解雇予告手当』です。

ただし、30日分の解雇予告手当を払うことで、解雇予告の原則が満たされるために即座の解雇もできることになります。

例えば、
【ケース1】
契約終了日が4月30日として4月20日に4月30日での解雇を通達したとなれば、20日分の平均賃金を支払えば4月30日で契約終了が可能になります。

【ケース2】
30日分の平均賃金を支払えば、4月30日の解雇予告だったとしても即日での契約終了も可能となります。

ここでのポイントは、『給与』と『解雇予告手当』とは全くの別物なので、【ケース1】の場合、給与とは別に20日分の平均賃金を支払う必要があるという点を留意ください。

4.不当な『雇い止め』をされた場合はどうすれば?

ルールに違反して不当な『雇い止め』と判断できる場合、『雇い止め』の取り消し、つまり会社に戻るか、または、賃金を請求することができます。

この選択は裁判等で争う結果にもなります。

【1】雇用契約書

【2】雇い止めの理由

【3】勤続年数

【4】契約更新回数

その際は、上記4点をもとに話し合いを進めますので、リスクヘッジとして就業中から予め準備を整えておくことをオススメします。

5.労働契約法による無期契約への転換

最後に労働契約法による無期契約転換への注意点について紹介したいと思います。

労働契約法とは、労働契約に関する基本的事項を定めている法律です。

その中で、有期労働契約が繰り返し更新されて通算5年を超えたときは、労働者の申込みにより、期間の定めのない労働契約(無期労働契約)に転換できると2015年に改定されています(労働契約法第18条)。

2020年4月から段階的に施工が開始される同一賃金・同一労働について非正規社員(パート社員、契約社員、派遣社員)の処遇改善が見込まれますが、仮に処遇改善がされる前に無期契約に転換してしまうと、処遇改善がされない場合があります。

あくまでも同一賃金・同一労働は非正規社員を対象としたものであり、正規社員においては明記されていないからです。

使用者(会社)からタイミングを見計らったように無期契約への転換があった場合には、注意してみてください。

※同一賃金・同一労働の施行
2020年4月から大手企業を対象に、2021年4月からは中小企業が対象になります。

6.まとめ

【1】有期契約でも『解雇予告』が必要な場合がある
  ポイントは『契約更新3回以上』『勤続1年以上』に該当する有期契約。

【2】『解雇予告手当』は平均賃金30日以上を請求できる。
  あくまでも解雇予告に違反した場合に請求ができるが、
  総合的判断になるため、無料の法律相談等への確認をオススメします。

【3】無期契約への転換は注意が必要な場合がある。
  同一賃金・同一労働は非正規社員の処遇改善が主な趣旨のため、
  無期契約転換後の処遇改善は認められない可能性もある。

以上、景気悪化が懸念される中で、誰もが生きることに必死になっています。しっかりと適切な知識を取り入れた中で、話し合いの場を設定しなければ一方的に損を掴まされてしまうかもしれません。

自分の身は自分で守る。

少しでもリスクヘッジのきっかけになれば幸いです。

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