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リーマンショックで学んだ不景気が招く今後の就活事情の変化と対策

新型コロナウイルスの影響が全世界に拡大している。

この景気の急降下は、やる気に満ち溢れていた2008年4月の新卒入社から一転、倒産危機の絶望を感じ、苦境の連続だったトラウマを蘇らせる。

2008年9月15日のリーマンショックの時と事象は違えど同等またはそれ以上のインパクトを新型コロナウイルスは齎す可能性がある。

2020年3月18日現在、ダウ平均株価は3年1ヶ月ぶりに2万ドルを割り、株の変動に左右されず、この数年継続して上昇を続けていた金(ゴールド)の価格でさえ、この数日で800円/g近く下げる結果となった。

観光業、宿泊業、飲食業、アパレルを中心にいよいよ各企業も運転資金が底をつき始めたのではないか。

ただ、残念ながら、WHOは3月11日にパンデミックを発表したばかりでワクチンもなく、終息の目処は立っておらず、未だに拡大の一途をたどる。

正直、今回の新型コロナウイルスがどのような景気変動やそれに応じた事象を及ぼすかについては予測不可能である。

ただし、大手人材派遣・人材紹介会社に10年在籍する中で景気変動は数回経験を重ね、景気悪化の原因は別にして、往々にして同様の傾向が見られた。

ここではリーマンショックの影響で人材業界にどんな変化が起きたのか、取引先企業がどんな対応を取ったのか、政府がどんな対応を取ったのか、あくまで私の経験値から考察した主観ではあるが、詳細を皆さんに伝えておきたい。

正直なことを書くと取引先企業を敵に回しそうな気もするが、就活生や転職者がキャリア形成で後悔しないために過去の出来事であるが、覚えている限り伝えたいと思う。

不景気が長期化の様相を呈す中で、今後どんな事態が予測されるのか、どんな対策を取っておくことが必要なのか、少しでも参考になれば幸いです。

1.リーマンショックの兆候

人材会社は景気を先読みすると言われている。
世界的にも期間の定めが伴う派遣事業は、企業の需給調整機能とされている。

例えば、通販サイトやメーカーも新商品を発売してから人員を増加したのでは新規の注文に対応できない。
そのために、新商品発売の前段階で人材採用を始めるわけだ。

逆に景気悪化においても同様で、仕事が減少する前段階で徐々に人員を削減し、景気悪化した時には既に人員の余剰がない状態を作りだしたい。
特に派遣事業は最低3~6ヶ月間の契約期間で更新するために仕事が減少する中で、人件費が一定期間かかるのを避けるべく、景気に敏感に連動していくわけだ。

リーマンショックでも同様で、2008年9月に景気が急落したわけではない。

人材会社の求人数と派遣スタッフの稼働数は2008年7月以降鈍化していた。
私の新卒の配属先が横浜・みなとみらいで輸出入貿易の盛んな地域でもあったことから、より顕著に株・為替の影響を受けながら動いていた。

2008年6月以前までは人材業界は右肩上がりの景気で、ボーナス3ヶ月分は当たり前だった。
人材業界の営業手法は、直接企業への飛び込み営業が主流の時代だったが、2週間も営業を続ければ求人はもらえると言われていた。

ところが2ヶ月の研修を終えて私が市場に飛び出すと現実は異なっていた。
初めて求人をもらうまでにかかった日数は3ヶ月間。
まだ、クールビズもなくジャケット・ネクタイが当たり前の時代に夏場は昼・夜で着替えを用意しながら、汗だくで来る日も来る日も同じことの繰り返し。

忘れもしない初の求人受注は訪問件数2341件目。
活躍できると期待を抱いていた私にとっては悪夢のような日々で、夜は寝ることもできず、急に涙が出る。日中は倦怠感に襲われ、喫茶店でサボることも多かった。

知識の付いた今思えば病院に行けば、自律神経失調症の診断書はほぼ間違いなく書いてもらえただろうと思う。

そして、リーマンショック。

始めは何のことだかよくわかっていなかったが、徐々に理解した。

2.景気悪化で派遣切りと政府による業務改善命令

リーマンショックの株価暴落により、予測できていなかった地場の製造業などは経営継続のために強引な対応に迫られた。

それが、派遣切りである。

リーマンショック以降、連日連夜、派遣切りの報道がなされ、職を失って年を越す人の派遣村が形成。

派遣のイメージはまさに最悪。

時の野党である民主党は、「根本的な原因は、派遣事業が法律に即して適切な運用がされていないからだ」と批判し、派遣切りは不当解雇であると訴え、いくつもの訴訟を煽った。

景気悪化の悪者探しをするが如く、ここぞとばかりに派遣労働者を守るという名目で、政府・厚生労働省は派遣会社に監査に入り、曖昧な解釈の中で多くを違法取引と判断し、直接雇用の義務を課していったのだ。

そもそも「働く」ということは明確な区切りがなく、お互いに業務を補完しながら成り立っている。
派遣社員と言えど同様で、「ここから先は仕事ではないのでやりません。」と割り切って働いている人は少数で電話応対や来客応対をしている人がほとんどだが、全て違法に該当すると判断

労働者派遣法の改正を待たずして、各都道府県の労働局が独自の解釈で指導を実施。

企業と派遣会社に即派遣契約終了、または直接雇用への切り替えを迫まるのであった。

もちろん派遣法に明確な業務区分けは明記されているわけもなく、派遣社員がどうやって労働官に説明するかで、白か黒かが決まって行った。

直接雇用になりたいという強く思う派遣社員は、庶務雑務を多く熟していると嘘を付く者もいたし、扶養枠などで自身の都合に合わせて働きたい派遣社員は、庶務雑務は全くやっていませんと嘘を付く者もいた。

企業からは曖昧な見解の中での労働局と派遣会社の対応に腹を立て、クレームを受ける日々。

企業と派遣社員とタッグを組み、なんとか双方がWinWinになる様に業務を変更して、労働局からの指導を掻い潜っていた。

日々、何の意味があるんだ、、、と悩んでいたのを覚えている。

テレビではチャンネルを変えれば、派遣切りか内定取り消しのオンパレードだった。

各県により解釈も指導の温度感も異なり、不平不満が蓄積していた中で、ついに2009年2月から大手派遣会社に順次、業務改善命令が下される。

日経新聞の一面を飾り、一歩間違えば業務停止。

つまりは倒産。

こうなると許可・認可事業は国の言いなりである。

心配を掛けないために帰り道で親に電話したことを今でも覚えている。完全に人生の歯車が狂っていた。

派遣業界は大混乱に陥り、日中は派遣社員への業務ヒアリングと企業への派遣法解釈と人材会社としての経営方針の説明、夜は深夜まで労働局への提出資料の作成。

なすすべなく国の方針に従い、厳格な判断のもとで行動せざるを得なくなった。法律に明記もなく、曖昧な判断なのにも関わらず。

派遣法解釈に適していない派遣労働者は業務変更による適正化、難しい場合は、派遣終了または直接雇用への切り替え交渉。

もちろん景気が暴落する中で、使い勝手の悪くなった派遣というスタイルを継続する企業は少なく、多くが派遣契約終了となり、雇用がどんどんなくなっていった。

派遣業界にいた人間として政府の判断が雇用の減少をより促進したと今でも思っている。

私は、新卒1年目から半ば強引な契約終了(リストラ)通達の連続。
まさに地獄だった。

派遣会社はリーマンショックを機に、売り切り型の人材紹介事業へ大きく舵を切り出している。

とはいえ、市場は冷え込み、求職者は増えるが、求人数は伸びず、人材の値段(派遣時給や転職の成功報酬料)がどんどん下がり、働いても働いてもボーナスがもらえない時期がその後4年間も続いた。

結果的に、リーマンショックにより世論は責任を政権を握っていた自民党に押し付け、初めて民主党が政権を奪取するきっかけを作ったのである。

その後、約140万人前後の派遣社員は、大きな国民票として扱われ、選挙が近くなると事あるごとに派遣法改正や同一賃金同一労働など、慌ただしく動く業界となっている。

3.景気悪化で起きる負の連鎖

つらつらと書いたが景気悪化による流れを纏めると、

①派遣切り、内定取り消しの発生
倒産を免れるために正規雇用以外を削減しようとする。

②国が派遣会社の取り締まり強化
雇用を守るために違法な契約終了を取り消し、さらに直接雇用に変えさせるために派遣会社と企業に取り締まりを強化。

③企業は雇用維持より経営優先
当たり前であるが、企業にとって派遣社員、契約社員、パート・アルバイトは需給調整の1つのスタイルでしかない。

④政府は国民票(支持率)を見ながら施策を実施
人材業界は政府の方針と共に良くも悪くも連動する。

新型コロナウイルスの拡大により、既にフェーズ1に入り出している。

今の時代でいうと、派遣切りの中には外国人労働者(技能実習生)も含まれる。そうなると、帰国を避けたい外国人労働者の不法就労や盗難などの犯罪は増えることが予測される。

派遣切り、内定取り消しもまだ一部だが、まだまだ始まったばかり、まだ採用活動をしていない企業も時期的に多く、新卒採用取り止めを判断する企業が今年は増えるのではないか。

4.雇用契約と転職活動において知っておくべきこと

景気悪化による雇用の削減は、いつの時代も避けられない。

■雇用契約において把握しておくべきは以下2つ
①雇用契約は口頭でも成立している
雇用契約においては、契約書面がなくても成立し、メール等のエビデンスがあれば尊重される。
内々定や内定という言葉は、採用通知書と同等の価値があるということを覚えておくと良い。

②雇用契約が雇用元の都合により短縮される場合は休業手当となる
新卒生において内定ということは、日本では4月1日入社が暗黙の了解として成立する可能性が高い。
つまり、入社日が5月、6月と後ろ倒しになるということは、休業手当の対象期間となり、最低賃金の6割以上が保障されることとなる。
就業中の方が、在宅による時短勤務や自宅待機を命じられる時も同様で、これは労働者の守られるべき権利なので、堂々と訴えよう。

休業手当について詳しくはこちら
(https://www.kaonavi.jp/dictionary/leave-payment/)

有給休暇なども同じだが、権利が合っても堂々とは使い辛く、やはり長く働く職場では波風を立てたくないという心理も働くと思います。

しかし、前提として知っているかどうかで人事担当者の対応は変化してくる。往々にして担当者には知識があり、対象となる労働者の知識レベルを把握しながら、妥協点はどこなのかを伺いながら、話しているはずである。

知識があることが分かると、権利を脅かすような強烈な交渉はして来ないので、まずは理解しておくことが重要である。


■転職活動において知っておくことは以下2つ
③転職活動は2020年9月までに完了させる。
転職活動を考えている方は早めに動くことをオススメする。
リーマンショックの時も同様だが、不景気になった年寄り、その翌年、翌々年の方が採用は鈍化する傾向がある。
絶対に今年中に転職したいという方は、転職活動を強化した方が良い。

④転職活動は人材会社に頼り過ぎず自主的に活動すべき
不景気になると求人数が減り、求職者数が増加する。
つまり、転職者からするとライバルが増えるわけである。
派遣会社・紹介会社頼みの転職活動は、高い専門性・スキル、経歴を有する人には適しているが、該当しない方は自発的に求人媒体経由での転職活動をしない限りは理想の企業への転職は難しくなるだろう。

実際には、能動的転職活動(媒体経由)と受動的転職活動(人材会社経由)の両面を合わせ、求人数の最大化を図ることがいつの時代にも求められており、今の日本の就職スタイルは受動的になり過ぎていてバランスは崩れている。

転職活動中の方は、景気の悪化を想定し、自主的に活発に動くことをオススメします。

以上、皆さんのキャリア形成を守るためには、自己防衛が重要です。

会社も経営継続に必死です。

時には皆さんに対して、強烈な交渉をしてくる場面もあります。

皆さんも自分の人生は自己責任であるということを理解して最低限の知識は押させておくことをオススメします。

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