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結局、一番「いい」写真というのは

愛犬の写真から

今年6月に愛犬が他界した。
イエローのラブラドールレトリバー、享年6歳。病気だった。

彼の死後、フォトブックを作成した。
ちょうどその年の4月、奇跡的な偶然で見つけたフォトグラファーさんの撮影会に参加していた。愛犬の写真を沢山撮っていただいたので、表紙はそれで決まりだった。

杏鈴さんより(旧twitter:@annabelle_photo)

きちんとしたカメラで、リードも加工で消してもらって、散漫な犬の視線を集める手際の良さは、まさにプロの技だった。

その日は犬も人も本当に幸せで、あんなに楽しそうな愛犬は見たことがないと思うほど、大切な思い出になった日だった。その思い出も含めて、最高の写真を撮っていただいた。

と、思ったのだが。

出来上がったフォトブックを見てみると、意外なことに、一番いい写真は素人の私が撮った写真だった。

コンビニの駐車場で撮った1枚
リードどころか、買い物袋まで映り込んでいる
上の写真から連続で撮ったもの。ブレてる

ちなみに、表紙の写真もわたしが撮ったものだ。うちの犬はとびきり顔がいいので、モデルの良さというのもあるかもしれない(親ばか)

冗談はさておき。技術的に上手い写真は、もちろんプロの作品なのだけれど。フォトブックを見た知人たちが「いい」と指差した写真は、わたしが撮った写真たちだった。当然ながら、どれがプロの写真かなどは教えていない。

その時はちょっと調子に乗ったのだが、あとでそのフォトグラファーさんの作品を拝見していて、理由がわかった。

フォトグラファーさんは色んな犬の写真を撮るのだけれど、その中でもうちの犬が一番顔がいいと思うのだけれど(親ばか)フォトグラファーさんのすべての作品の中で、わたしが一番「いい」と思った作品は、やはり彼女の愛犬の写真なのだ。

兄が妻を撮った写真

突然めちゃくちゃ失礼なことを言うのだが、わたしの兄の嫁は10人中10人が振り返る絶世の美女、というわけではない。笑顔が素敵な女性だが、基本的に化粧や着飾るという行為に無頓着なひとだ。
つまり、10人が見れば10人が「顔がいい」と言うであろうわたしの愛犬に比べると、写真映え度は劣っているに違いない。そもそも、犬という素晴らしい生き物に比べて、人間なんかが造形の美しさで敵うはずがないのだけれど(犬過激派)。

愛犬が死んだ直後、同じく6月に、兄夫婦を訪ねて沖縄へ行った。母の還暦祝いだった。

実に海である

兄もわたしも、気合を入れて母の写真を沢山撮った。プレゼントを渡す時なんかは、連写する勢いで沢山撮った。兄は関東から来たわたしたちのために、沖縄の美しいところや旅行の思い出をいっぱい残しておいてくれた。

旅行から帰ってきて、兄から写真が送られてきた。
やはりわたしよりいいカメラを使っている。送る時に選別してくれたのか、そもそもわたしみたいにブレたりしないのか、写真はどれもはっきり人が写っていて、いいものだ。

しかしだ。

母とわたしが口を揃えて言ったのは、兄が送ってきたすべての写真の中で、一番「いい」写真は、義姉の写真だということだった。

主役は母だったので、当然ながら、数が多いのは母の写真だ。兄の妻の写真はほんの数枚程度で、それもレストランで食事を待つ間に暇潰しに撮った、何気ない写真である。

写真に写った兄の妻は、どれも照れたような笑みで――真っ直ぐに、兄を見ている。

結論:一番「いい」写真とは

ありきたりなことかもしれないが、結局のところ、一番「いい」写真とは、いつだってその人が一番大切に思っている相手にカメラを向けた時に撮れるものなのだろう。

同じ被写体でも、カメラを向ける人が彼を愛しているか否かで、撮れる写真は変わってくる。

同じうちの犬の写真でも、プロが撮った写真より、わたしが撮った写真の方が。
プロはどの犬も素敵に撮ってくれるけれど、一番素敵に撮れるのは、彼女自身の愛犬の写真で。
兄は無意識に、妻を一番良く撮っている。

写真とはおそらく、そういうものなのだ。


世界一顔がいいうちの犬

2023.11.1追記:「#写真が好き」の想いを伝える OM SYSTEM noteコンテスト結果発表|OM SYSTEM 最終候補に選んでいただきました!

#写真が好き #写真 #愛犬 #犬


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