いつだってやさしい。
蝉の鳴き声が聞こえなくなって、体にまとわりつく空気がほんの、ほんの少しだけさらりと感じる。そう思って油断していると、日差しは容赦なく皮膚を突き破るように、チクチクと体を虐めてくる。
まだまだアイスカフェラテは手放せないけれど、冷房の効きすぎた室内にいると、温かい飲み物も飲みたくなってくる。冷えた体に温かい飲み物がゆっくりと流れてゆく。考えただけで心がとろける。
何か書かないとと思いながら、何も書けない、書きたくない。そんな日々が続いている。無理やり紡いだ言葉は、読み返すと必死さが伝わってきて、恥ずかしくなって隠しておきたくなる。
書かないと、もう何も書けなるかもしれない。書き方だって、すっかり忘れてしまうかもしれない。そんな不安に襲われて、けれど本当に何も書けなくて、頭の中で言葉が散らばって、かき集めてもかき集めても、腕をすり抜けて遠くへ流れて行ってしまう。
他人から送られてくるやさしい言葉、悪意のない意地悪な詮索、こちらを探るように見つめる眼差し。自分のペースを守ろうとすればするほど、それらがわたしの行く手を阻み、固く掴んで離さない。
行く当てもないから、本当は掴んだままでいて欲しい。ここにいてくれと言われたい。そうして言われるままにして、他人に責任を押し付けられたら、自分のせいにしなくて済むのに。
本があってよかったと心底思う。何も言わずに、開けば黙って受け入れてくれる。涙を流していても「どうしたの?」なんて聞いてこない。聞かれたい時もあるけれど、聞かれたくない時だってある。小難しい捻くれた人間に、本はいつだってやさしい。
最後までお読みいただき、ありがとうございます! 泣いたり笑ったりしながらゆっくりと進んでいたら、またどこかで会えるかも...。そのときを楽しみにしています。