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短編連作小説『透目町の日常』まとめ

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短編連作シリーズ『透目町の日常』をまとめました。基本的には一話完結なので、気になった作品からご覧いただければ幸いです。
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短編連作シリーズ『透目町の日常』を紹介する

はじめまして、四十九院紙縞と申します。 この記事では、唐突に投稿を開始した短編連作シリーズ『透目町の日常』についての話をしていこうと思います。 通りすがりに偶然この記事を見かけたかたに興味を持っていただければ幸いです。 やんわりと世界観の話と、現時点で投稿している作品の紹介をしていきますが、この記事を読まないとこのシリーズの世界観がわからなくなるということは決してありませんので、ご安心ください。 「透目町」とは 物語の舞台となる「透目町」とは、架空の町です。 町の名前

【短編小説】幽体離脱を経験した友達とお喋りする「私」の話

『稀によくあるありふれた日々』 「風邪をひいたときにみる、変な夢ってあるじゃん」  放課後。  なんとなく家に真っ直ぐ帰る気になれなかった私たちは、学校の教室に残り、雑談に興じていた。  中学三年生の秋。  部活は春先に引退し、受験に本腰を入れなければならない時期。しかしそれ故に、どこかで肩の力を抜きたい衝動に駆られる。今日のこの時間は、お互い明確に言葉にはしていないが、息抜きの意味合いが強かった。先へ進む為には、こういう時間も必要なのだ。  それに、今日中に彼女に伝えておき

【短編小説】鬱で療養中の「私」が昔馴染みの雪女と雪だるまを作る話

『雪解けのときはまだ遠く』  小学生の頃、雪が降っている日に限り、同い年くらいの女の子とよく遊んでいた。  雪が音を吸収し、世界に一枚布を被せたような静寂さが支配する世界では、私と彼女の笑い声だけが響き渡っていた。雪だるまを作り、氷柱を使ってチャンバラをし、かまくらを作り、雪合戦をした。  彼女は、少し――いや、かなり、不思議な子だった。  烏の濡羽色のような瞳も髪の色も、ただ美しいと思うだけだ。私が不思議に思ったのは、彼女がいつも、こちらが寒く感じるほど薄着であることだ。私

【短編小説】友達(猫)を殺した犯人を捕まえる為に友達(人間)と協力して張り込みをする「私」の話

『はんぶんこの二乗と抱擁』  友達が二人、公園で殺された。  いや、この表現は些か正確性に欠くか。事実に即して著すのであれば、「友達の地域猫が二匹、公園で殺された」である。  私は子どもの頃から、猫と仲が良かった。  それは一般的に動物に好かれている状態というものではなく、本当の本当に、猫に特化していると言って良い。母さんが言うには、赤ちゃんの頃に公園デビューしたその日に、それはもうすごい数の地域猫が寄ってきたそうだ。  さらに、私には猫の話す言葉がわかるということもあり、猫

【短編小説】葬式のときに稀に現れる『沙汰袈裟さん』に遭遇した「私」の話

『沙汰袈裟さん』  十月某日、私は義母の葬儀に参列する為、妻と共に透目町を訪れていた。  妻である詠未の実家がある透目町は、普段私達が暮らしている場所からは、飛行機や新幹線を使わなければならないほど遠方にあり、盆と正月に帰省できれば良いほうだった。  詠未の地元は、とても穏やかな空気が流れているように感じる。今回は、平時であれば帰省しない秋口ということもあって、余計にそう思うのかもしれない。  まるで、全て赦されていくような。  或いは、全て飲み込んでいくような。  私の乏し