【短編小説】突如現れた正体不明の女性と同居することになった「私」の話
『名無しの名無花さん』
ある月曜日の朝、リビングで知らない人が家族と朝食を食べていた。
両親はとっくに食事を済ませ、母は早々に仕事へ行く準備を、父は家族全員分の弁当の用意をしていて。それを横目に、兄はテレビを観ながらトーストに齧りついている。
毎日代わり映えのない光景に、しかし今日は、異物が一人。
その知らない人は、兄の正面の席に座り、同じように朝食を食べていたのである。
見た感じ、二十代前半ほどの女性だ。胸元まで真っ直ぐに伸びる黒髪は、どんなヘアケアをしているのか