【長編小説】暮れなずむ秋と孤独な狛犬の歌 #15
10月4日(金)――(5)
「……明日は、土曜日だな」
逡巡の末、僕はそう話を振ってみることにした。
迷惑がられている気配を察知したら、大人しく引き下がるとしよう。あくまで、少女の気持ちが最優先である。
「むむ、もうそんなに日が経つのか。……あ、いや、人間の暦では、そう呼ぶのだな?」
「そ。だから明日は、学校が休みなんだ」
「良いことじゃないか」
「そうだけど。だから、夕方にここへは来られないってことを言いたくて――」
「えっ」
果たして、少女は愕然とした声を上げた。