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蜃気楼みたいな夜だ

それにしても都会は夜も明るいな。
星が見えにくいって言うけど、
照らしてやらなくても十分明るいだろうと星が思ったからなのではなどと考えてしまう。

真夜中の隅っこで膝を抱えて何を想う。
全く知らないあの人やあの人は、
真夜中に部屋の明かりがついているあの部屋の住人は、一体いま何を想う。

今夜は私も、換気扇の下をラボと呼んでみようかな。
好きな曲を大音量でイヤホンで聴いて。
煩わしいのに夜だからって自分の部屋の中で他人に気を遣っている。

もう長い事ベッドで眠っていない。
朝起きて仕事へ行って帰宅して軽くお酒を飲んで眠るのをリピートしてるセットリストみたいな毎日。
でも同じ日なんて一日もないんだよっていう、そこらじゅうに落ちてる誰かの言葉は気休めにもならない。
そんなこといちいち。
そんなこといちいち。

目つきの悪いせいで睨んでるって勘違いされる人みたいな、
普通のライトが強いせいで、ハイビームと勘違いされてパッシングされるみたいな、
そんな些細な事が沢山沢山溜まって溜まって
そうして溢れ出した時にその人の名前を初めて知る事になるんだろうな。

ドレスコードが守れないからあの店へは一生行かないだろう。

映画みたいなストーリーを幾つも考えたよ。
太陽は6000℃だって知っていた?
自分の人生の中に戻りたい場所がある?
でもその記憶もさ、蜃気楼みたいにゆらゆら揺らいで、そのうちにどんどんと美化されて、思い出は思い出だからこそ綺麗なままで。
昔の自分に憧れてる。

駅のホームに立っていた、凍えそうな夜も
小説に夢中でうっかり乗り過ごしたあの夜も
今と比べたら全然いいなあって
昔の自分に憧れてる。

最高だっていう瞬間に、
今が最高だって気がつけたら
後悔や憧れなんて知らずにいられたのだろうか。

こんな夜は東京タワーに登りたい。
こんな夜は東京タワーに登りたい。

そうしてキラキラした街を見るんだ。
もしそうできたなら今日を幸せに出来たのに。


解けない知恵の輪と
一面しか揃わないルービックキューブ

悔しかった日のことと
それを我慢した強さのことを
誰も知らないけれど
それはこれからも私だけは知っていて
そうしてそのうちに、果たしてあれは強さだったのかと疑問に変わって、結局何もわからないまんま灰になるんだ。

自分も解明出来ない自分のこと。

好きと恥ずかしいを天秤にかけて、恥ずかしいが勝ったならそれはそんなに好きじゃないってことだから、そんな人はもうその程度の好きにお金も時間もかけることはないんだよ。
早いとこやめてしまいなよ。

ああ、もう時間はそんなにないっていうのに
あなたもあなたも随分とのんびりしているね。
人生にすっかりくつろいでしまっている。

ああ、もう時間はそんなにないっていうのに。

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