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ちょっと変なこと言いますね

私は多分悪いことをしたくても、根がビビりなので本気で楽しんで悪いことは出来ない人間だと思うんです。
よく言えば根が真面目なんです。

窓ガラスを割る手が震えてるタイプだと思います。
盗んだバイクを翌日持ち主に落ちてましたと届けるかもしれませんし、なんならガソリン満タンにして返すかもしれません。

多分盗んだ時点でもうお天道様の下をのんきには歩けない気さえします。

今まで様々な仕事に就いてきました。
真面目なので上司からの信頼を得るのは早いと感じます。色々あって、昔少しだけ日焼けサロンでバイトをしていたことがあったのですが、ギャル達はなるべく働きたくないのです。そんな中、色白の場違いな私がせっせと真面目に働いており、お店のオーナー的なおじ様がアポ無しで急にお店の様子を見に来るのですが、ワンオペの上、お客様がいない時間だったのに私が真面目に掃除をしている姿を見て、信じられないぐらい驚愕し、褒めちぎってくれたのです。その後そのオーナーの働く不動産屋さんの事務で働くようになりました。しばらくしてわたしはその町を離れたので離職したのですが、それからだいぶ年月が流れたある日、そのオーナーから連絡が来ました。内容は、この度不動産屋として独立したのだけれど、信用できる人を考えたらスズメさんが一番に浮かんだので、是非うちで働いて欲しいと。

私はいくつもの事に驚きました。

だって私、普通に働いていただけなのに、周りがあんまりにも不真面目だった為に、私のごく普通の真面目さがもう群を抜いて物凄く真面目に彼の目には映っただけなのですから。
そして、だいぶ長い年月が経ったというのに、1番に浮かんだのがということは、どれほど不真面目な人ばかりの中で働いていたのかと。(本当か嘘かはわかりませんが)
結局お断りしたのですが、とてもありがたいなあと思ったと同時に少し彼を気の毒にも思いました。
どうか今は真面目な方が仲間になっていることを、そっと祈ります。

真面目な事は良いことばかりではありません。
なんだか損した気持ちになる事も沢山あります。
ちゃんとしたい自分を裏切ることが難しいのです。
やんちゃな方を羨ましく思うこともあります。
あの人に頼むのは少し不安だなぁというポジションをとてもお得に感じてしまう事も多々ありました。
立場は同じなのに責任が私に流れてくる事を少し不幸に感じたこともきっとあったのだと思います。
そして一度信頼されてしまえば、私は裏切ることが出来ないので、一生懸命やり遂げます。
それがまた信頼を積み重ねるのです。
あなたに辞められると困るという言葉がずっと嫌いで、それを聞く度に辞めたくなりました。

きっと同じような方が沢山居るのだと思います。
私は相変わらず仕事に対して真面目ですが、考え方が少し変わってきました。
店長代理をするようになってしばらく経ってからでしょうか。新人が入れば教育する立場となり、店に貼られた責任者の欄に自分の名前が入るようになり、沢山の仲間を迎えては沢山の仲間を見送り、またゼロから新しい仲間を迎えるサイクルの中で、増えていく手紙や、上京したアルバイト生が帰省する度に会いに来てくれることが、なんだかとても温かく、なんだかとてもありがたく、なんだかとてもたまらない気持ちにさせてくれるのです。
私はそういうことの一つ一つを想うたびに、自分の真面目さに少しずつ感謝していけるようになりました。

更には卒業と共に辞めていった高校生の母親がお店に来て、あの子行きたくないって言ってたんですけど、スズメさんがいるから頑張りたいって言って通っていたんです。ありがとうございました。と言われた事が2回ほどありました。

私はもうやりきれなくて、と同時に驚いてしまって、本当は泣き出したい気持ちでした。
だって私は、その子をあまりよく思っていなくて、とても良い子だったのに思い切り優しく出来なかったなあと思っていた子だったのです。
自分では表に出していないつもりでも、自分の中でもっと優しくしてあげられたし教えてあげられることもあったはずだと感じていました。
私の体調があまり良くない時に、栄養ドリンクを渡してくれて、早く元気になってくださいねと可愛いメモまでつけてくれるような、そんな優しい子だったのです。

私は自分を思い切り引っ叩いてやりたい気持ちでいっぱいになりました。
それからもたまにその子のお母さんが買い物に来てくれる度に、言いようのない気持ちに胸が痛みました。
別に意地悪をしたわけではないし、普通にお話もしていたけれど、もっと色々してあげられたのになあという後悔が消えず、私はその自分を未だに許していませんし、きっとずっと忘れずに許せないままだと思います。

おばあちゃんにしたことと、彼女にしてあげられなかったことを、なんとなく重ねて、私はずっと背負って、それでも生きていくのだと思います。

私が上京してから久々に数日帰省するある日、私は家族にお土産を買っていました。
上野駅だったと思います。
おばあちゃんに、これでいいやと選んだドライフルーツ一袋。

おばあちゃんにあげると、それはそれは本当に喜んでくれました。
良かった良かったと思い、数日して私はまた東京へ帰りました。

それからまた何年か後に帰省した時に、おばあちゃんに会うと、あの日あげたドライフルーツのことを嬉しそうに話すのです。
おばあちゃん嬉しかったぁ、美味しくてね、もったいなくて誰にもあげないでちょっとずつ食べたんだよーと嬉しそうに。おばあちゃん、認知症だったのです。
それなのにあの日のことを何年も覚えていてくれたのです。

私があの日、これでいいやと選んだ全然気持ちも何もこもっていないドライフルーツを、おばあちゃんは宝物のように大切にしていたのです。
私はもう自分が悲しくて悲しくてたまらなくなりました。なんてひどいことをしてしまったのだろうと思いました。おばあちゃんにとっては良い思い出だったかもしれませんが、私にとってはとても後悔の残る出来事でした。

孫が8人いるのに、認知症がひどくなってからも私の名前ばかり呼んでいたというおばあちゃん。
もっと会いにいっていれば良かったと後悔ばかりが残ります。
おばあちゃんはもう亡くなってしまいましたが、私はあの日のおばあちゃんのことばかり思い出してしまいます。

後悔などいくらでもできます。
してしまいます。生きている限り。

だから私はなるべく優しく、そして真面目に、だけれどのんきに楽しく生きていたいと思っています。

なかなか思うようにいくことばかりではありませんが、途中なんてそんなものですよね。
テレビの占いも、たまに見る時に限って悪いですし、なんだかそれも人生っぽいです。

もうとうに諦めてしまったこともいくつかありますが、行ったり来たりしているのを他人のせいにすることなく生きていけたらと思います。

だいぶ長くなってしまいました。
タイトル通り、ちょっと変なこと言いました。
今日もありがとう。この世の全てに。

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