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【2024年3月】先月聴いた中でお気に入りのアルバム

 こんにちは。毎月恒例のやつです、今月は新譜が多めです。やっていきましょう。

downt『Underlight & Aftertime』(2024)

 3ピースバンドの持ち味をフルで活かしているサウンドメイキングだと思いました。シンプルな演奏ながらもそれぞれがそれぞれを引き立たせるような相互作用を感じられました。バランスが整っていてスタイリッシュな印象を受けました。繊細ながらも時に情熱的な表情を見せる歌声と、詩的で情緒的な歌詞の相性もばっちりでした。曲ごとに尺や音色を大胆に切り替えたり環境音のような音だけを使用したりなど、オルタナならではの自由な感性の伸ばし方、表現の仕方も存分に発揮されていました。バンドメンバーのやりたいことや創作意欲がありありとサウンドに現れたアルバムです。

SEKAI NO OWARI『Nautilus』(2024)

 ファンタジーな音色の中に弱さと優しさが共存したアルバムでした。弱さという命題は逃げることや諦めることや無力感と多様な角度でリアルに描かれていますが、だからこそそこから生まれる生きる術や力、またその出来事がもたらす結果・現在というとこまでしっかり描写されていて、それを柔らかくパッケージングしているこの作品のコンセプトがしっかりと確立されていました。ネガティブになりすぎず最終的にアルバムは小さな幸せと希望が漂う《サラバ》に帰結するのも美しかったです。作曲者3名の様々なアレンジが楽しめるのも魅力的です。特にロックなアンサンブルが印象的なバンドサウンドがより際立っていたかなと思いました。

離婚伝説『離婚伝説』(2024)

 メロウで上品なラブソングが並べられた美しいアルバムでした。ソウルフルで味わい深いサウンドがアルバムを通して表現されていて、愛というテーマを多角的に歌詞にした曲とも相まって強固な統一感がありました。ソウルミュージックへの造詣が深いことはサウンドにしっかり表れていて、それだけでなくシティポップのような発展のさせ方も感じられました。キャッチーで親しみやすいメロディーもずっと頭に残ります。温かく甘く切なくて懐かしい。それでも着地点は現代J-POPシーンにあっても特異的にならないバランス。最新の音楽でありながらもノスタルジーな雰囲気も併せ持つある意味で日本人らしい作品だなと思いました。Lampのように海外で爆発的な人気が出そうなバンドです。これからの動向に注目したいですね。

ハンブレッダーズ『はじめから自由だった』(2024)

 紛うことないストレートでヤングなエネルギーがあふれかえる気持ちいアルバムでした。シチュエーションもスケールも自由自在に操って様々な情景を描き出す詞はとてもわかりやすく共感しやすかったです。またそこを狙いに行ってるようなイヤらしさは全く感じず、純粋なロックへの憧景と楽しみたいという気持ちがビシビシと伝わってきて爽快でした。演奏も奇をてらうことなくシンプルでまとまりのあるバンドサウンドが印象的でした。でも楽曲それぞれの表情付けもしっかりと感じられました。全体を通して音楽に対して最大限のエネルギーをぶつけながらも真摯に向き合って丁寧に制作されているなと感じました。そこから生まれる芯の力強さがきらりと光っている作品です。あと、ジャケ写のロボットがかわいい(笑)

竹内アンナ『DRAMAS』(2024)

 多幸感にあふれるポップで鮮やかなアルバムでした。メロディーが弾む曲はよりダンザンブルに、穏やかなバラードはより情緒的にきっぱりとアレンジが施されていて、アルバム全体を通した緩急のメリハリが効いていました。それぞれの楽曲に込められたエピソードもどれも大袈裟でない素直な描写で、そこに現れるリアリティを濁らせなくポップソングに昇華させていてとても魅力的に感じました。《DRAMAS》の中に出てくる台詞「No retake because it's real life. This is your drama right?」というメッセージが作品全体を通して優しく流れてくるアルバムでした。アルバムタイトルにあるようにそんな小さな日常を切り抜いてデコレーションしたスクラップブックのような優しさと楽しさが伝わってくる作品です。

後藤正文『Recent Report Ⅰ』(2024)

 アジカンのゴッチさんが本名名義で発表したアンビエント作品。楽器の演奏だけでなくサンプリングやフィールドレコーディングも多様して独特のニュアンスを放っていました。ダークとまではいかないけど仄暗くて少し不安になるようなゆらゆらした音像と、フィールドレコーディングによる有機的なサウンドから得られる安心感との釣り合いが絶妙でした。またバイノーラル音源やDolby Atmosで配信されているので、立体感や臨場感も増幅されてよりこの作品にのめり込むことができました。映画のサウンドトラックというか、映画の世界そのものの中に入ったようなリアリティと肌感覚が味わえる一枚でした。

motoki tanaka『motoki tanaka』(2024)

 揺らめくような不思議な空間が広がるアルバムでした。あんまりこういうのよくないのかもしれませんが、坂本慎太郎に雰囲気がすごく似ています。けどそれよりもメロディアスで情景も想像しやすかったです。でも歌詞はぎりぎり掴めそうでつかめきれず、どこかふわふわ言葉がぽつぽつと浮かんでくるような不確定さが楽曲との相性を引き立てていました。メロウでシンプルな演奏が心地よく、昭和の特撮作品のようなレトロな肌触りも感じられました。独特の言語感覚もよりサイケなイメージを増幅させていて、本作の世界観を強固なものにしてるなと思いました。この独特な感性が全面に押し出されていましたが、ソフトな音像でスルスルと聴けてしまう面白い作品でした。

NUUAMM『w / ave』(2017)

 現実から切り離されたフォークのようなドリームポップのようなアルバムでした。ただでさえ個性的なマヒトゥ・ザ・ピーポーと青葉市子、それぞれの世界観が高度な次元で混ざり合ってSF的で少し寂しい美しいカオスが生まれていました。静と動、生と死、様々な現象が複雑に絡み合い大きな深い穴に穴に落ちてゆくような感覚。白昼夢のように難解で頭が追い付かないのですが、けどそれを補うにあまりある美しさがありました。両者二人とも細い声で囁くように歌う歌唱法もこの世界観に臨場感と説得力を付加していて、アコギを中心とした演奏もシンプルながらも計算された音の配置で物足りなく感じることはありませんでした。神秘的でどこかスピリチュアルとさえ思える幻想的な一枚です。

以上。先月聴いたアルバム一覧のリストです↓

 正直なところ、今月はハマった曲が結構多かったです。けどアルバム単位でってなるとまたピックアップしてくるものは変わってきて。もうあと3,4作くらい追加してもよかったんですがちょっと厳しかったのでここら辺にとどめておきました。なるべく書くスピードはやめていきたいですね。そんな感じです。

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