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【短編小説】友達
「おまえもスマブラもってるの?」
隣の席のコウキ君が声をかけてきた。
小学2年生の僕に初めてできた友達だ。
「うん」
ホッとした。
小学生になったら一緒に遊べる友達が自然とできるものだと思っていたが、1年経っても現れなかった。
休み時間になると男の子たちが集まってゲームの話をして盛り上がっている。そのグループの一人がコウキ君だ。
これだと思った。
いつも帰りが遅いお父さんに初めておねだりした。
お酒臭いお父さんの顔が一瞬怖く見えたが、翌日買って来てくれた。
僕が同じゲームを持っていると知ると、コウキ君が家に遊びに来たいと言うので「うん」とだけ答えた。
すごくワクワクしていた。
僕の家は、階段を上がった廊下のつきあたりの203号室。
階段を上っている途中、後ろから「きたなっ」と聞こえたが無視した。
背中が無性に痒くなった。
「おまえんち、だれもいねぇの?」
植木鉢の下から鍵を取り出して扉を開けた。
「うん」
家には誰もいない。
コウキ君は家の中をキョロキョロしている。
「せまっ」
そうなのかと思った。
また背中が痒くなった。
「はやくやろうぜ」
テレビを付けてゲーム機を起動させた。
コウキ君はうつ伏せになってコントローラーを握っている。
「ぜんぜんキャラいないじゃん。オレがだしてやるよ」
コウキ君は色々教えてくれる。
友達とはこういうものなのか。
ピンポーン
「すみませーん」
「だれかきたぞ」
「うちじゃないとおもう」
「ふーん」
コウキ君は、瞬きをほとんどしないでゲームしている。
すごいなと思った。
「おまえ、へたくそだな」
外で階段を上がってくる音がした。
僕は急いでトイレに向かった。
すごくドキドキしている。
ガチャッ
扉が開いた。
靴を脱ぐ音がする。
床に何かを置いたようだ。
駆け足で奥の部屋に進んでいった。
「てめぇ人ん家でなにしてんだよ!!」
怒鳴ったあとに叩く音がした。
僕は静かにトイレからでた。
おそるおそる奥の部屋を覗き込む。
お母さんがコウキ君の背中をヒールで何度も叩いていた。
コウキ君はうずくまって泣き始めた。
いつもの僕のようだ。
そうか。この人は僕が嫌いなんじゃなく、子供が嫌いなのか。
僕の検証が終わった。
「よかった」
背中がまたヒリヒリしだした。
//くたくたさん、写真を使わせて頂きました。//
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