伝えられない真実

整体に行った事はありますか？

僕はこの前、初めての整体を経験したのですが、
結論から言えばとても良かったです。

背骨がS字に曲がっていたみたいで、
それを真っ直ぐに直してもらい、スッキリ。

「体が軽くなった」とか言ったりするけど、
ほんとにそんな感じでした。

整体って痛くないの？

そう思われる人もいると思います。
僕もそうでした。

背骨を整えていく際、
思いっきりバキバキッと。

イメージしてた通りの、
いかにもな施術を受けましたが、
痛みは全くありませんでした。

僕の受けた整体のコースは1時間。
前半の30分はバキバキと骨を整え、
残りの30分はマッサージ。

マッサージの方はと言うと、
もみもみというよりも、ぐりぐり。

凝りをほぐすだけじゃなく、
なんでも老廃物を、体の外へと流し出すのだそうです。

そんなわけで、
僕の整体は、バキバキとぐりぐりのコース。

それで、
そのコースの、マッサージ中での話。

僕の担当の方が、
マッサージの途中で代わったんですね。

バキバキと音のする施術は、
それなりに専門性が高いらしく、
それが出来るスタッフはひっぱりダコ。

マッサージは別の人に交代するみたいです。

20代後半くらいの、
専門的なスキルを習得している、
自信に満ち溢れた男性。

僕の担当のその人は、
次の予約の人のもとへと。

そして代わりにやってきたのは、

40代くらいの、
頭頂部の薄くなっている、
人懐っこそうな、
少し小太りの男性。

担当スタッフの様子は、
ガラリと変わってしまいましたが、
なんと彼、
マッサージが上手い！

最初の彼よりも、
マッサージにおいては抜群に気持ち良い。

やるじゃん。
見かけによらず。

でも、まてよ。
ちょっと体臭がしますね。
あなた…

そして、
これは些か、
耐え難いかもしれない…

ツンと鼻を突く様な悪臭というよりも、
なんというかマイルドで、ミルキーな匂い。

例えるなら、シチューの様な悪臭。

いやいや、
シチューはいい匂いですよね。
だからシチューと例えるのは間違ってるんですがね。

なんというか、ニュアンスがシチューなんです。

決して、カレーではない。
まったく、
加齢臭かもしれないのにね。

あれ？
僕は、一体何の話をしてるんですかね…。

「お客さん、痛くないですか？」

僕の上に乗っている、
シチュー臭の彼が聴いてくる。

「ふぁい、だいじょぶれす、きもちいいれす」

なるべく空気を吸わないように、そう答える。

背中に彼の生温い体温と、
鼻に彼の生臭い体臭を感じながら。

僕は、
マッサージの時間を耐える。

あれ？
僕は、一体何の競技をしてるんですかね…。

40代くらいの、
頭頂部の薄くなっている、
人懐っこそうな、
少し小太りの、
マッサージの上手い彼。

彼は自分が、
シチュー臭である事に気づいているだろうか。

「あなたちょっと、シチュー臭がしますね」

と、
彼に面と向かって言える人はいるだろうか。

きっとこんな感じで、
伝えられない真実というものが存在しているのだろう。

シチュー臭マッサージを堪えながら、そんな想いに馳せる僕。

その中ではたと気付く。

僕も彼と同じ40代。
何かしらの「臭」がしても不思議はない。

僕にも未だ、
伝えられていない真実があるのかも知れない。

そうだとしたら、とても怖い。

が、
おそるおそる想像してみる。

僕は ー

旨み成分が溢れるイタリアン ー かも知れない。

香ばしく薫る、イタリアン臭。
それもなかなか嫌だなぁ。

そして、
こんなワードを思いついた。

「体臭食堂」

なんてね。

と、
おバカな話をして参りましたが、

整体はとても良かったので、
ほんとにおすすめですよ。