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【抄訳】“ウクライナにおけるロシアの無人兵器システムの使用” (Russia’s Use of Uncrewed Systems in Ukraine, Jeffrey A. Edmonds & Samuel Bendett, CNA, May 2023)

以下、本論考の全体要約(エグゼクティブ・サマリー)の日本語訳になります。


  • ロシア軍事ドクトリンに沿って、ロシア軍は無人航空機(UAV)を、ウクライナにおける“情報・監視・偵察(ISR)”任務で広範に用いてきた。これによって、砲撃・対砲兵・精密攻撃ミッションで、ロシア軍は重要な任を果たすことができている。

  • ロシア軍の攻撃目標設定手順における多くの場面で、ISR用ドローンが中心的な役割を担っているにも関わらず、ロシア軍の対応速度は遅く、それが移動目標との交戦を困難にしている模様だ。

  • 探知と目標設定のタイムラグが浮き彫りにしているのは、ロシア軍保有の軍用水準の無人戦闘航空機(UCAV)が不足していることである。これらの兵器システムがあれば、探知から攻撃までの時間をもっと短くできるだろう。開戦以前の軍発表で示されているように、ロシア軍がこの種の兵器システムへの投資を行っていることは明白だが、この種の兵器がすぐに戦場に登場する可能性は低い。

  • ロシア・ウクライナ戦争において、民間製ドローンが、切迫するISRの必要性への取り組みと、原始的な徘徊兵器としての利用を目的として、重要視されるようになっている。ロシア軍とその指導部はこの種のドローンの役割をなかなか受容できなかったが、現在、このようなドローンの使用を軍内で促している。

  • これらドローンの重要性を認識しているにも関わらず、ロシアの軍産複合体は、ロシア軍が必要とするのに十分な数のドローンをなかなか生産できずにいる。生産が進まない理由には、国内の能力不足、組織間の競争対立、コミュニケーション不全、この問題に関するロシア政府中央の指導力の欠如といったことがある。

  • 民間製ドローン不足への解決策として突然あらわれた現象に、ロシア軍用のドローンとその部品を提供するグループがロシア国内で立ち上がったというものがある。また、このグループは、軍事任務への民間製ドローンの統合方法、軍事任務での民間製ドローンの使用方法に関する指導的立場にあるかのように振る舞っている。

  • ドローン使用の“戦術・技術・手順”(TTP)は、戦場での実体験に基づいて開発されている。ロシア国内のグループがロシア・ウクライナ両軍のドローン使用を観察することで、標準化されたドローン使用訓練とそのTTPをロシア将兵に提供する新たな取り組みが進展しつつある。

  • 弾薬を備え付けた高価でない民間製ドローンは、多くの場面で、その使い方と損耗率の点で通常弾薬類と同じようなものになっている。この種のドローンの多くは、軍事施設や軍事プラットフォームに損害を与えるための、使い捨て可能な、一回のみ使用のプラットフォームとして認識されている。このような使用法が、ドローンを防空システムにとってコストパフォーマンスの悪い攻撃目標にし、ウクライナ軍防空展開を軍部隊防御と重要インフラ防御の両方に対する中途半端な展開にする可能性を生むという、追加的効果をもたらしている。

  • 軍事UAVに関する課題への取り組みとして、ロシア軍はイラン製軍用ドローンを幅広く用いている。数百キロの航続距離と対抗ジャミング・システムをもつことで、このイラン製ドローンは、ウクライナの軍事プラットフォーム及び重要インフラを目標とする攻撃に関して、その有効性を示している。

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